【コンテスト参加作品】私が愛した人は、殺人犯でした。
「だから文哉……この先の人生は、文哉に決めてほしい」
「……え?」
それでも私は、文哉と一緒にいるっていう決断を下したい。 守るべきものが、あるから。
「言っておくけど、私は文哉のことを軽蔑したりなんてしないから」
「え……なんで?」
「過去は過去、今は今だと思ってるからだよ」
過去に縛られて苦しい思いをしたことは間違いないし、これから先だってきっと、そのことで苦労するかもしれない。
だからこそ私は、そんな文哉を支えていきたい。
「今の文哉は、立派に生きてるじゃない。……両親がいなくて寂しい思いをしたはずなのに。それなのに文哉は、しっかり前を向いて生きてるでしょ? それって本当に素敵なことだと思うし、立派なことだと私は思う」
「杏珠……俺は、杏珠のために生きていきたいと思ってる。 これからもずっと……杏珠と一緒に生きていきたいんだ」
私は文哉の頬を優しく包み込む。
「文哉……これからはその辛い気持ちも、楽しい気持ちも、全部二人で分け合っていこう? 私と一緒に、共有していこう」
「杏珠……」
そんな文哉の目から流れるその涙を、私はそっと拭った。
「文哉は、自分の過去としっかり向き合っていける人だよ」