その甘さに、くらくら。
五月女は校内で、男女問わず首を噛み、吸血したことがある。噛まれた相手は発情させられるが、五月女はその後のケアを一切せず、自ら噛んで吸った血を不味いと言わんばかりに吐き出して舌を打ち、不快そう顔を歪めてその場を離れ、放置するのだ。
それが原因で、彼が極上の血を探し求めているヴァンパイアであることが周知の事実となった。それも極悪の。彼に噛まれてしまった人の中には、発情が原因で二次被害に遭った人もいる。その人は精神的に心を病んでしまい、不登校になっていた。止めを刺したのは五月女ではないが、きっかけを作ったのは五月女で。それでも彼は、自分の行いを改めようとはしなかった。
五月女の周りに人が寄りつかないのは、多かれ少なかれ、そういった嗜虐的な要素を含むヴァンパイアだからだろう。優しくない、甘くない、サディスティックなヴァンパイア。
そんな五月女も、三年になってからは、大人しい仮面を被って何やら様子を窺っているかのように静まっている。どこかで念願の、好みの血液を見つけたのかと思ったが、そういうわけでもなさそうだ。五月女の両眼は相変わらず鋭いから。いつでも獲物を喰える目をしているから。
生徒と生徒の間から覗くように五月女を一瞥し、口の中の、形を崩した食べ物をごくりと飲み込む。五月女は固く唇を閉じ、静かに瞬きだけを繰り返していた。今、彼は、何を考え、何を思っているのだろう。
無表情で、思考が読めず、そんな五月女とは誰も関わろうとしないのに、容易には話しかけられないのに、どうして、なぜ、過去の俺は。理性を失くしていたからといって、どうして。
それが原因で、彼が極上の血を探し求めているヴァンパイアであることが周知の事実となった。それも極悪の。彼に噛まれてしまった人の中には、発情が原因で二次被害に遭った人もいる。その人は精神的に心を病んでしまい、不登校になっていた。止めを刺したのは五月女ではないが、きっかけを作ったのは五月女で。それでも彼は、自分の行いを改めようとはしなかった。
五月女の周りに人が寄りつかないのは、多かれ少なかれ、そういった嗜虐的な要素を含むヴァンパイアだからだろう。優しくない、甘くない、サディスティックなヴァンパイア。
そんな五月女も、三年になってからは、大人しい仮面を被って何やら様子を窺っているかのように静まっている。どこかで念願の、好みの血液を見つけたのかと思ったが、そういうわけでもなさそうだ。五月女の両眼は相変わらず鋭いから。いつでも獲物を喰える目をしているから。
生徒と生徒の間から覗くように五月女を一瞥し、口の中の、形を崩した食べ物をごくりと飲み込む。五月女は固く唇を閉じ、静かに瞬きだけを繰り返していた。今、彼は、何を考え、何を思っているのだろう。
無表情で、思考が読めず、そんな五月女とは誰も関わろうとしないのに、容易には話しかけられないのに、どうして、なぜ、過去の俺は。理性を失くしていたからといって、どうして。