その甘さに、くらくら。
過去の自分を呪っても、過去は変えられない。その事実は変わらない。俺の記憶も、五月女の記憶も、消せない。そんな都合のいい記憶喪失など、あるはずがない。
小さく溜息を吐き、渇く喉を潤して、黙々と食べて空になった弁当箱を静かに片す。カバンの中にはやはり、俺の探している血液などなかった。
でも、あれは、あの血は、正直、それほど美味しくはなかった。不味かった。ゴムのような味がして、不味かった。また、ハズレを引いたと思った。ハズレばかりだった。飲む気にならなかった。飲まないでいられたらよかった。でも、飲まなければならなかった。だから、飲んでいた。不味すぎて、気持ち悪かった。我慢するしかなかった。
美味しいと感じる血液を、随分と長い間飲めていない気がする。何か血液に細工でもされているのだろうか。俺の味覚が狂ってしまったのだろうか。美味しい血液に当たらない。美味しい血液が見つからない。
もう不味いのはできるだけ飲みたくないな、と落としたか盗られたかした血液の味を思い出してしまいながら、なんとはなしに、前の席の女子生徒に目を向けた。俺を一切警戒していない小さな背中。後ろで一つに括られた長い髪の毛。露わになっている白い首筋。釘付けになる。噛みつきたい。彼女の体の内側を流れる血は美味しいだろうか。
目を動かし、首を動かし、隣の席の男子生徒を見る。げらげらと楽しそうに笑っている。喉仏を見て、首筋を見て、ごくりと唾を飲む。噛みつきたい。彼の体の内側を流れる血は美味しいだろうか。
小さく溜息を吐き、渇く喉を潤して、黙々と食べて空になった弁当箱を静かに片す。カバンの中にはやはり、俺の探している血液などなかった。
でも、あれは、あの血は、正直、それほど美味しくはなかった。不味かった。ゴムのような味がして、不味かった。また、ハズレを引いたと思った。ハズレばかりだった。飲む気にならなかった。飲まないでいられたらよかった。でも、飲まなければならなかった。だから、飲んでいた。不味すぎて、気持ち悪かった。我慢するしかなかった。
美味しいと感じる血液を、随分と長い間飲めていない気がする。何か血液に細工でもされているのだろうか。俺の味覚が狂ってしまったのだろうか。美味しい血液に当たらない。美味しい血液が見つからない。
もう不味いのはできるだけ飲みたくないな、と落としたか盗られたかした血液の味を思い出してしまいながら、なんとはなしに、前の席の女子生徒に目を向けた。俺を一切警戒していない小さな背中。後ろで一つに括られた長い髪の毛。露わになっている白い首筋。釘付けになる。噛みつきたい。彼女の体の内側を流れる血は美味しいだろうか。
目を動かし、首を動かし、隣の席の男子生徒を見る。げらげらと楽しそうに笑っている。喉仏を見て、首筋を見て、ごくりと唾を飲む。噛みつきたい。彼の体の内側を流れる血は美味しいだろうか。