『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
誕生日の前日。
急な出張で一日名古屋で対応に追われた璃子は、二十一時過ぎに自宅へと帰宅した。
「疲れたぁぁぁ~~~っ」
ヘロヘロになってる体でリビングのソファに倒れ込む。
癒しが欲しい……。
可愛いワンコとじゃれ合いたいだなんて、……疲れ切ってる証拠だ。
コートを脱ぐことも面倒だと思うくらい、体が重い。
メイクは落としたいけれど、シャワーを浴びに浴室へと歩いて行く気力がない。
あと三時間で三十歳。
二十代と三十代の違いは何だろう?
この疲労感が、もっとヤバくなるのだろうか?
もしかして、一気にシミやしわが出て来たり……?
怖い。
考えるのも恐怖だ。
突っ伏してる顔を僅かに起こし、ソファ横に置いてある鞄に手を入れスマホを探す。
声くらい、聞いてもいいよね?
履歴から『八神くん』の名前をタップする。
トゥルルルルッ、トゥルルルルッ…。
「はい、……璃子さん?」
「今帰って来たの」
「おかえり」
「……ただいま」
「ご飯食べたの?」
「新幹線の中で少し食べた」
電話越しの優しい声音にホッと癒される。
「明日なんだけど」
「……ん?」
「十七時に部長と約束が入ってて。八神くんに会うの、その後でもいいかな~?」
「……ん、いいよ」
「ごめんね?」
「仕事より俺を優先してとは言わないよ」
「っ……」
「仕事してる璃子さん好きだし、俺」
「………ありがと」
「けど、夜は空けといてね?璃子さんちに泊りに行くから」
「……ん」
彼より仕事を優先してる私を責めもせず、彼はいつもでも受け止めてくれる。
いつか愛想尽かされるんじゃないかと思う反面、彼なら全て理解してくれるかな?だなんて甘い考えの私がいる。