『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
*
十六時四十五分。
出先から直接部長から指示されたホテルへと到着した。
化粧室で最終チェックをする。
部長直々に“会って貰いたい人”と言うくらいだから、大事な取引相手なのだろう。
以前にも紹介された過去があり、部長に信頼されてるからこそだと思えば、断ることなんて出来ない。
「フゥ~、よしっ!」
メイクを直して気合を入れ直した。
指定された和食処に到着すると、個室へと案内される。
「失礼致しまっ………ッ?!!!お疲れ様ですっ」
「…どうぞ」
「………失礼致します」
浅沼部長の他に、個室には既にもう一人いた。
私が勤務しているHASUMI FOOD Co.,Ltd.の蓮水 穣社長だ。
細身のスーツを着こなす社長は優雅に足を組んでいて、私の一挙手一投足をじっと見据えている。
緊張する。
会議や社のイベントで何度も顔を合わせたことはあるが、こうして対席したことなど一度もない。
「営業部の仕事はどうだね?」
「あ、はいっ、とても遣り甲斐を感じております」
「浅沼からよく話は聞いてるよ。我が社に凄く貢献してくれてると」
「そんな……とんでもありません」
五十代とは思えぬ色気と社長としての風格、落ち着いた優しい声音。
社内だけでなく、業界でもかなりやり手でイケメンだと噂の人物だ。
「浅沼に無理を言って席を設けて貰ったんだけど、迷惑だったかな?」
「いえっ、恐縮です」
「フフッ、そんなに緊張しなくても平気だよ」
「……すみません」
緊張しない方がおかしい。
一社員が、社長と食事するだなんて……。
社長と部長が視線を合わせたのを視界に捉え、気付かれないように深呼吸した、次の瞬間。
十六時四十五分。
出先から直接部長から指示されたホテルへと到着した。
化粧室で最終チェックをする。
部長直々に“会って貰いたい人”と言うくらいだから、大事な取引相手なのだろう。
以前にも紹介された過去があり、部長に信頼されてるからこそだと思えば、断ることなんて出来ない。
「フゥ~、よしっ!」
メイクを直して気合を入れ直した。
指定された和食処に到着すると、個室へと案内される。
「失礼致しまっ………ッ?!!!お疲れ様ですっ」
「…どうぞ」
「………失礼致します」
浅沼部長の他に、個室には既にもう一人いた。
私が勤務しているHASUMI FOOD Co.,Ltd.の蓮水 穣社長だ。
細身のスーツを着こなす社長は優雅に足を組んでいて、私の一挙手一投足をじっと見据えている。
緊張する。
会議や社のイベントで何度も顔を合わせたことはあるが、こうして対席したことなど一度もない。
「営業部の仕事はどうだね?」
「あ、はいっ、とても遣り甲斐を感じております」
「浅沼からよく話は聞いてるよ。我が社に凄く貢献してくれてると」
「そんな……とんでもありません」
五十代とは思えぬ色気と社長としての風格、落ち着いた優しい声音。
社内だけでなく、業界でもかなりやり手でイケメンだと噂の人物だ。
「浅沼に無理を言って席を設けて貰ったんだけど、迷惑だったかな?」
「いえっ、恐縮です」
「フフッ、そんなに緊張しなくても平気だよ」
「……すみません」
緊張しない方がおかしい。
一社員が、社長と食事するだなんて……。
社長と部長が視線を合わせたのを視界に捉え、気付かれないように深呼吸した、次の瞬間。