『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
「うちの系列会社の蓮水食通(独自の食品運送会社)の今野正臣という男がいてね。専務をしてるんだが、白井君にどうかと思って紹介したいんだが」
「………へ?」
「以前、広報誌に載った時があっただろ。あの時に今野が君のことをえらく気に入った感じでね」
「………」
一昨年の秋に行われた企画コンペに入賞した時のやつだ。
そんな前から気に留めてくれてる人がいただなんて……。
「失礼だが、今恋人はいるのかな?浅沼の話だと、お付き合いしてる人とは解消したと聞いてるんだが…」
「……はい。婚約していた人とは既に解消しています」
「そうか。……急な話なんだが、この後に今野と一緒に食事でもどうかな?」
「えっ……」
「仕事は真面目で、男の私が見ても、結構容姿は整ってると思うんだが。勿論、白井君の好みもあるだろうが、年齢的にも白井君の二つ上でお薦めだよ?」
「………」
何て返答していいのか分からない。
今野専務の話は噂で何度か聞いたことがある。
優しい物腰と実直な性格で、グループ内でもかなり人気があると。
そんな人に気に留めて頂けたのは嬉しいけれど、私には……。
「社長、部長、……申し訳ありません。私には今、お付き合いしている人がいまして……」
「え、……白井さん、恋人がいたの?」
「……はい。少し前からお付き合いしてます」
まさか、部長の会わせたい人が社長だと思ってもみなかった。
しかも、その社長直々に見合いを持ち掛けてくるだなんて……。
「その恋人とは、結婚をする予定なのかな?」
「っ………」