『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「出て来なさい」

突然社長が部屋の隅へと声をかける。

「ッ?!!」

部屋の一角に置かれている衝立の奥から、なんと……八神くんが現れた。

何故、彼がここにいるの?
えっ、……一体、どういうこと??

「座りなさい」
「……璃子さん、ごめんね」
「…………どういうこと?」
「白井さん」
「はい」
「社内には極秘にしてるんだけど、彼は社長の息子さんなの」
「へ?!」

浅沼部長からの超特大爆弾発言に、心停止した気がした。

「息子から聞いてると思うが、過去に色々あってね。高校卒業後に留学させ、帰国と同時に社員として働かせることにしたんだよ。社長の息子としてではなく、一社会人として育って貰いたいと親の勝手な願いもあってね。妻の旧姓である八神を名乗らせたんだ」
「………」
「黙っててごめんね」

申し訳なさそうに表情を曇らせる彼。
頭が混乱して、返す言葉が見つからない。

「いずれは息子に会社を継がせるつもりでいるが、まだ若いこともあって。せめて、人生の伴侶くらい自分で見つけることができたら、やりたい部署に就かせてやると約束したんだよ。人生そんなに甘いものじゃないからね」
「………」
「息子が君の話をする時は、本当に幸せそうな顔をするんだよ。あぁ、この子も一人前になったなぁと思ってね」
「っ……」

優しい物腰から放たれる言葉は、親として安堵した想いが込められている気がした。

「白井さん、いや違うか。……璃子さん」
「は、はいっ」
「式はいつでも構わないんだけど、出来るだけ早くに籍だけ入れて貰えると助かるかな~?」
「へ?」
「ちょっ……親父、マジで口閉じてっ!!」

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