『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
だったら、強請ってみろよ
「わぁ~っ、凄ぉ~~っい!!」
公園の広場にある噴水が急に水飛沫を上げたと思ったら、その噴水はどこからともなく漏れて来る音楽に合わせて律動し、目の前で繰り広げられる世界に吸い込まれる。
「まだまだだよ」
「へ?」
フフッと笑みを溢した彼が腕時計に視線を落として数秒。
「えっ?!……何これ!!」
突如現れた光の世界。
何もない空間に突如シンデレラ城のようなお城が出現し、その周りにも煌めく星畑のようなものが一面に広がっている。
プロジェクションマッピングだ。
噴水の3D演出も感動ものなのに、更にその上を行く感動のひととき。
だってこういうことって、事前に準備してないとできないことだし。
今日ここに私が来るかだって分からないのに……。
繋がれている手が凄く熱い。
彼の想いがいっぱいに込められている。
「璃子さん、……蓮水璃子になってくれませんか?」
真っすぐ見つめて来る彼の瞳は凄く優しくて、安心感を与えてくれる。
「………ご、ごめんなさいっ」
「え゛っ……」
ポロポロと涙が溢れ出す。
こんなにも嬉しくて、感動するとは思ってもみなくて…。
元彼にもプロポーズはされたのに、あの時の感動とは雲泥の差。
心の最奥に響く温かい気持ち。
こんなにも幸せをかみ締めていいのだろうか。
「ごめんねっ、……嬉しすぎてっ」
「は?……はぁぁぁぁああぁぁぁ~~っ、っんだよっ、断れたと思ったじゃんっ」
両手で顔を覆い、しゃがみ込んだ彼。
ホッと胸を撫で下ろしたみたい。
だって幸せすぎて、破顔してる顔を見られたくなかったんだもん。
五歳も年上だと、浮かれた顔を見られるのもちょっと勇気が要るんだよ。
それに、少しくらいはその余裕そうな顔を崩したくなるのよ。
「璃子さん、覚えてろよ?」
「っ……」
悪戯っぽく微笑む彼が、かわいく思えた。