『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
結局、豪華すぎるエタニティーリングを買って貰った。
ちょうど指に合うサイズもあったこともあり、そのまま着けて帰って来たけれど。
三百万は軽く超えるそれに、正直左手が震える。
こんなに順調でいいのだろうか?
今までが色々あり過ぎたのかな……。
「何ですか、その不安そうな顔」
「……こんなに幸せでいいのかな?って」
「まだまだですよ。これからもっと幸せにするんで」
「っ……」
にこっと笑いかけて来る彼に心からホッと出来る。
こういう安心感をいつだって与えてくれる人だ、彼は。
“渡したい物がある”と言われ、ジュエリー店を後にした私達は彼のマンションへと。
「ちょっと待ってて」
リビングのソファに座らされ、彼は奥の部屋へと。
戻って来た彼の手には、目が点になるようなものが握られていた。
「俺のサインはしてあります。璃子さんの都合に合わせるんで」
「……」
「でもまぁ、“待て”ができるタイプじゃないんで、できるだけ早めにお願いします」
「っ……」
目の前に差し出された婚姻届。
既に証人欄に彼の父親である社長のサインまである。
「それと、これは新居とか挙式の準備するための費用にでも使って下さい。当面仕事に追われてそっち方面は手伝えないと思うんで」
「……」
婚姻届だけでも驚きなのに、これって……通帳じゃない。
「中、見てもいい?」
「もちろん、足りなかったら言って下さい。それ、株の配当のやつなんですけど、他にもやってるのあるんで、税金対策に幾つかに分けてあるんですよ」
「っっ……」
二十五歳じゃなかったっけ?
私の目がおかしくなったのだろうか?
一、十、百、千、万、十万、百万、千万……お、おっ、億ッ?!!
通帳残高が、二億を超えている……。