『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
味見してみます?
「圭吾、今暇?」
「ん~、暇だけど」
「酒に付き合って」
先輩と食事をした後に、親友の柳生 圭吾に電話をかけた。
圭吾は実家が近所ということもあって、物心ついた時からの腐れ縁。
海外の大学に進学せざるを得なかったけれど、それでも圭吾との関係は続いている。
自宅近くの居酒屋で待ち合わせて、二週間ぶりに酒を酌み交わす。
「何か、悩んでるっぽい顔だな」
「……相変わらず、鋭いな」
「仕事柄ね~、何事も冷静な判断力が求められるからさ~」
圭吾は大手証券会社に勤務している。
昔から冷静沈着な性格で冷めた風に見られがちだけれど、実は熱い漢気のあるやつ。
義理人情に厚く、こうして声をかければいつだって駆けつけてくれる。
「前から話してる先輩がいるじゃん」
「あ~、美人な上司ね」
「その人に、今日告った」
「は?……マジで?」
「ん」
「で?」
「玉砕覚悟で告って、結構断崖絶壁に立たせられてる」
「マジか~」
「まだ一年しか経ってないしな」
「三年待つつもりだったんじゃねぇのかよ」
「そのつもりだったんだけど、なんかもう限界つーか」
「周りから結構狙われてるんだったよな」
「そそ。……破談になって、結構どきつい陰口叩かれてるのに、やっぱすっげぇ美人だしさ」
「そんで、色気駄々洩れなんだろ?」
「……ん」
容姿端麗なのは事実だけど、それだけじゃない。
仕草一つ一つに色気が滲み出てるというか。
泣き顔ですら色っぽく見えてしまうほど、重症なんだよ。
「悠真が追い詰められてる理由って何?年齢?」