『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
「適当に座ってて」
「手伝いますよ?」
「いいよ~、座っててくれれば」
「……はい」
コートを脱いだ八神くんが、リビングをウロウロし始めた。
「テレビつけてもいいし、DVDとか観ててもいいからね~」
八神くんの家と違って、ゲーム機はない。
上司の家だから、多少は気を遣うよね?
買って来たおつまみとビールをリビングテーブルに置き、冷蔵庫にある食材で簡単なおつまみを作る。
さすがに乾きものだけでは味気ない。
この部屋に男性を入れるのが初めてというわけじゃない。
市くんだって来たことがあるし、数か月前に体調を崩した時に黒川くんがお見舞いに来てくれた。
ただ、好意を寄せてくれてる男性を招き入れるのは、初めてだ。
ほんの少しだけ、緊張する。
ホットカーペットの上に直に座る八神くん。
寒くないかな……?
風邪を引かせたら、上司として失格だ。
「えっ、何すか、これ。すっげぇオシャレっ!」
「ちくわを半分に切って、焼き目のある方にマスタードとマヨネーズや梅肉塗って、大葉挟んで巻いただけだけど」
「いや、めちゃくちゃかわいいっつーか、カタツムリみたいで凄いっすねっ」
「フフッ、味は普通だよ?」
「じゃあ、とりあえず、乾杯しますか?」
「ん」
プシューと缶ビールを開け、乾杯する。
本当は、ノンアルで話した方がいいんだろうけど。
さすがに金曜の夜にノンアルで二人きりとか、無理がある。