『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「まだ眠い?」
「……ん~、少し」
「じゃあ、まだ寝てていいよ」

抱き締められている腕を解こうとすると、更にぎゅっと力が込められた。

「どこ行く気ですか?」
「……シャワーして来るだけだよ」

一日仕事して、その後大量にお酒を飲んで。
挙句の果てには五歳年下の彼と激しい運動をしたんだから。
汗は掻くし、お酒臭いし、何よりメイクを落とさず寝てしまった事が一番気にかかる。

この歳でメイクを落とさずに寝るとか、ありえない。
一日の手抜きが一年分のお手入れが無駄になるのに。

「一緒に入る」
「ダメ」
「何で?」
「そこは気を遣おうよ」
「……無理」
「私も無理」

ここは譲れない。
女性としての身だしなみというよりも、年齢的な手入れを見られたくない。
こういう時に五歳差を感じるのよ。

「全部見ましたよ?」
「言わなくていい」
「何に恐れてるんですか?」
「……」

もうっ、だから若い子は怖いんだよ。
目が澄みきってて、何でもお見通しな感じが。

「年齢的にさ、見られたくないこともあるんだよ」
「えー別にいいじゃないですか。めっちゃ明るい部屋でシた仲なのに」
「っ……、だから言わなくていいからっ」
「あーもう、めんどくせぇなぁ」
「ッ?!」

面倒くさい?
年増だから??
そういうこと、口にする子なんだ。

「パックしててテレビ観てようが、ストレッチしながら料理してようが、気にならないっつーか、そういう先輩も好みなんで」
「っっ……」
「相当ごつい美顔器ガンガンしてても引いたりしませんよ?」
「へ?」
「俺、姉貴いるんで。見慣れてますから、そういうの」
「………」

< 43 / 126 >

この作品をシェア

pagetop