『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

璃子さんが作る料理は、凄く手の凝ったものではないけれど、味は凄くいい。
俺好みで、優しい味がする。

仕事が忙しいから料理自体あまりしないのかと思ってたけど、家事スキルはそれなりに装備されてるっぽい。
部屋も綺麗だし、洗濯する手際もいい。
こういう人と結婚したら、男は幸せだろうなぁ。

「ねぇ、八神くん」
「……ん?」
「職場の皆には秘密にさせて貰ってもいい?」
「……俺との関係?」
「ん」
「先輩に迷惑がかかりますよね」
「迷惑というか、……八神くんが後ろ指さされるのはちょっと嫌かな」
「俺は別に構わないですよ?俺が先輩のこと、好きになったんだし」
「でも、社内の印象は八神くんの方がいいじゃない」
「……そうでもないですよ?先輩、仕事はできるし、美人だし、破談になってもさほどダメージないじゃないですか」
「いや、結構大ダメージだったけどね……」

夕食を食べる手が自然と止まる。

「先輩、いつか結婚するとして、結婚後も仕事続けたい派ですか?それとも、家庭に入りたい派?」
「……昔は家庭に入るものだと思ってた。手に職があるわけでもなかったしね」
「で、今は?」
「今は、相手の都合もあるだろうけど、できれば続けたいかな。出産とか転勤とか、何らかの事情がなければ」
「いいと思います、それで。仕事してる時の璃子さん、カッコいいですから」
「でも、このまま仕事に専念してたら、ますます結婚とは無縁だよね~、まぁそれでも十分幸せなんだけどさ」

璃子さんは自嘲気味に微笑んだ。

「俺と結婚します?そしたら、ずっと続けても構いませんよ?子供の送り迎えとか面倒なこと、全部俺がするんで」
「へ?」

俺の言葉に目をまん丸にして驚いた顔が、凄くかわいい。

< 46 / 126 >

この作品をシェア

pagetop