『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
「冗談は寝てから言ってよ~、これだから営業マンとはまともな会話ができないよね~」
はぐらかされた。
まぁ、いいけどね、今は。
「八神くんのお姉さんって、何してる人?」
「専業主婦」
「え、……結婚してるの?」
「はい、去年結婚しました」
「……そうなんだぁ」
「今、妊娠中で実家に帰って来てますよ」
「えぇ~、赤ちゃんいるんだぁ」
「先輩も子供欲しいですか?」
「そ……」
「そ?」
やっぱり結婚の話に触れると、切なそうな表情になる。
まだ心の傷は癒えてないっぽい。
早いとこ、修復工事完了しないと、長期戦になりそうだな。
*
「何ですか、この布団」
「八神くんの分だけど」
昨日みたいにベッドでイチャイチャして寝たらよくね?
何でわざわざ客布団出してくんの。
しかも、寝室じゃなくて、リビングに。
「警戒してます?」
「ん」
「はっきりな物言いで」
しれっと言い切った彼女は、南側の窓のカーテンを閉めに。
「アレの日ですか?」
「……違うけど」
「じゃあ、昨日俺とシて後悔してるんですか?」
「……してないよ」
「じゃあ、何なんですか?」
「っ……」
カーテンを掴む彼女の手を掴んだ。
体を覆うように背後に立って……。
「自分でもどうしていいのか、分からないの」
「俺との関係?それとも、こういう時間?」
「……」
口を噤んでしまった。
後悔してないとしても、まだ恋愛する余裕がないということか。
「ゆっく「根本的に不感症が治ったわけじゃないのに、八神くんの好意を利用したくなくて」
俺の言葉を遮るように発せられた言葉に、果てしなく安堵する俺がいる。