『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「えっ、……あ、ダメっ」

ベルギーの空港内の病院で処置して貰った包帯を解きにかかる八神くん。
患部はしっかりと処置してあって、きっちりと巻かれているそれが、有無を言わさず取り除かれる。

「ん?……どうされるのが、ダメなの?」
「っっっ」

完全に手のひらで転がされている。
妖艶な視線を向け、煽るようにペロッと唇を舐めた。

「じっとしててね?」

わざと耳元に置きセリフして行った。

解いた包帯とガーゼをリビングにあるごみ箱に捨てた彼。
部屋を出て行ったと思ったら、救急箱を手にして戻って来た。

「ちょっと沁みるよ?」
「っ……」

消毒スプレーを吹きかけ、真新しいガーゼが当てられた。
そして、真剣な表情で丁寧に包帯を巻く彼。

「手慣れてるね」
「ちょっと前まで、姉貴とよく取っ組み合いの喧嘩してたんで」
「え?」
「まぁ、今は妊娠してるから助かってるけど」
「フフッ、想像してたのとは違うかも、お姉さん」
「酔うと最悪。容赦なく急所蹴るし、スマホが無いな?と思ったら、冷凍庫に監禁されてた」
「何そのおもしろエピソードっ!」
「先輩の半身浴の話には負けますけど」
「………フフッ」
「笑ってる璃子さん、かわいっ」
「っっ~~っ」

いつも余裕そうな顔してる彼の意外な一面を知れて、ちょっとほっこりする。

「璃子さんは、兄妹とかいるんですか?」
「いるよ、弟が一人」
「幾つですか?」
「今年二十六歳」
「俺の一つ上かぁ。何してる人ですか?」
「旅館の番頭?」
「は?……なんか意外」
「そう?」
「はい。がっつりインテリなイメージです」
「へぇ~」

< 55 / 126 >

この作品をシェア

pagetop