『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
「一番長く付き合った彼女とは、どれくらい続いたの?」
出張中にふと彼のことを思い浮かべてた。
取引先の会社に、彼に雰囲気が似てる人がいて、八神くんを想い重ねてみたりして。
「半年くらい?いや、もっと短かったかも」
「え?」
「ちゃんと付き合った子、いないに等しいっつーか。学生の頃は断るの面倒で仕方なく……みたいな感じだったんで」
「……そうなんだ」
「璃子さんは?」
「元彼との二年かな」
「やっぱ、結婚を考えるくらいだから、凄い好きだったんですか?」
「う~ん、そりゃあねぇ……」
「なんか、妬けますね」
「……気になる?」
「当然でしょ。璃子さんに『不感症』って言ったやつですよ?すっげぇ腹立つし、一発ぶん殴らないと気が済まないですっ」
「フフッ」
「何で笑うんですか?」
「いや、普段は可愛いワンコなのに、今一瞬大型の番犬に見えたから」
「何すか、それ」
「ごめんごめんっ」
一瞬、ガルルルッと唸ってる八神くんに見えたのよ。
「年末年始は実家に帰るの?」
「……正月くらいは顔出そうかと思ってますけど」
「(クスッ…)怪我しないようにね?」
「璃子さん、実家どこ?」
「……大分だけど」
「えっ?!!」
「何、その反応」
「めっちゃ遠いっっっ」
「……ん、だね」
「え、……まさか、年末年始に実家に帰るとか言いませんよね?」
「……帰るよ?」
「マジで?」
「うん」
シュンと項垂れるワンコに見えてきた。
可愛いっ。
「ぎゅーしていいですか?」
「いつもは聞かないじゃない」
「ちゅーもしていいですか?」
「さっきもしたよ?」
「その先もしてもいいですか?」
「そのつもりで連れて来たんじゃないの?」
「俺と結婚してくれます?」
「……まだ付き合って一カ月だよ?」
これは営業トークなの?
返しに困るんだけど。