『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

聞いてねーよっ。
っつーか、大分って遠すぎんだろっ!

『今から会いに行っていいですか?』って、車でサクッと行ける距離じゃねぇ。

今日が十二月二十七日。
いつ実家に帰るんだろう?

帰るなら飛行機だろうし、それ考えたらやっぱり三十日くらいには帰省するなら、会える日は今日入れて三日?
いやいやいやいや、出張で六日も会えなかったのに。

何だよ、これ。
放置プレイかよ。
ふざけんなっ。

分かってるよ。
璃子さんは、俺ほど熱を上げてないってことくらい。
出張中だって、数回しか電話取ってくれなかったし。
メールなんて完全にスルーされたのも。

それでも仕事一筋だから、我が儘言えないと思って我慢してたのに。
え、また我慢しなきゃなんねーの?
つらっ……。

「八神くん、温泉好き?」
「……璃子さんと一緒に入れるなら、好き」
「一緒には無理だなぁ…」
「何ですか、その返し。おやつチラつかせて、待て!みたいなの」
「年末年始に予定ないなら、温泉でもどうかな~とか思ったんだけど」
「え……」
「けど、混浴は無理だよ?」
「え、何なに?どーいう流れ??」
「ん?……あ、八神くん、知らないの?」
「何が?」
「うちの実家、温泉旅館なんだけど」
「はぁぁぁあああっ?!」
「混浴はしてないから無理だけど、来るなら部屋用意するよ?」
「え………何そのスペシャルなおやつ!!」
「あはっ、しっぽフリフリが見える♪」
「キャンキャンッ♪」

これって、期待していいんだろうか?
いや、めちゃくちゃ期待すんだろーっ!!

実家に俺を連れ帰るってことだよな?
え、それって……??

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