『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「えっと、璃子さん」
「ん?」
「俺を誘う理由は何?」
「……どういう意味?」
「それは俺が知りたい」

八神くんに年末年始の予定を聞かれた。
だから、素直に予定を答えたんだけど?

六日も出張で放置しちゃったし。
クリスマスも彼女らしいこと、何一つしてあげれなかったし。
挙句の果てには、年末年始は実家の旅館が忙しくて、毎年手伝ってるとは言い出し難い。

お正月は実家に帰ると言ったから、それ以外の休日に、ふらっと温泉でも浸かりに旅行に来たいというなら、航空券くらいは私が負担してもいいかな?だなんて思ったんだけど。

よくよく考えたら、実家に彼氏を連れ帰る図になるわけで。
三十路女が五歳も年下の若い男の子をわざわざ東京から連れ帰るって……。
幾ら単なる温泉旅行だと言ったとしても、『結婚前提』的な雰囲気になりそうな予感。

「ごめんなさい」
「何で、謝るの?」
「深く考えてなかった」
「……え?」
「出張でクリスマスも一緒に過ごせなかったし、何日も放置したうえ、年末年始も放置するのはどうかな?と思って提案したんだけど。自分が三十路だってこと、すっかり忘れてて」
「三十路は関係ないでしょ」
「関係あるよ」
「どこが?」
「だって、破談になった三十路女が五歳も年下の若い男の子を連れ帰ったら、非婚主義になりました!って言ってるもんだし。うちの両親は八神くんに期待しちゃうと思「させたらいいじゃん、期待でも願いでも」
「え……?」
「俺、璃子さんにもう二回もプロポーズして、二回ともスルーされてんだけど」
「……っっっ」

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