『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
彼女にこれ以上何かしたら、黙ってないよ?
「明けまして、おめでとうございます。来週から市川くんが、『顧客管理チーム』のチーフになります。宣伝部からもスタッフが移動になりますが、うちの部署からは、加賀くんと木根さんの二人が配属となります。手薄になった部分の補充は四月に新卒の子が入る予定なので、三か月の間ですが、みんなでフォローし合うように」
新年一発目の朝のミーティングで、凛々しく挨拶をする璃子さん。
半年前から事前告知されていた通り、市川先輩が新チームのチーフに抜擢された。
年末の仕事納めのあの日。
突然知らされた先輩の実家事情。
またとないチャンスに、俺は勇気を振り絞って彼女の帰省に便乗した。
単なる同僚扱いでもいいと思ってた。
璃子さんの心がまだ俺に預けられてない以上、未来を期待するのもお門違いだと承知の上で。
弟の婚約者(若女将候補)の有里さんが、あまりにもド天然すぎて。
ご実家の旅館は毎日大運動会みたいに賑やかだった。
俺が宿泊してることなんて殆ど意識されてなかったというか。
もしかしたら、気遣って貰ったのかな?なんて、思ったりもしたけど……。
*
(回想)
約束通り、旅館の雑用を手伝わせて貰いながら、年末年始を過ごしていた俺は、璃子さんの計らいもあって、結構気兼ねなく過ごせていた。
「ちょっと、いい?」
「はい」
宿泊三日目。
璃子さんのご実家に宿泊させて貰ってる俺の部屋に、弟の健人さんが訪ねて来た。
缶ビール持参で部屋に来た健人さんは、神妙な面持ちで缶ビールを開けた。
「姉貴の、どこが好きなの?」