『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「えっ、お姉さん、ご出産されたの?!」
「ん、先週。なんか急に産気づいたとかで入院したんだけど、子供の状態があまりよくないとかで、帝王切開して産んだ」
「赤ちゃんとお姉さん、大丈夫なの?」
「うん、もうすっかり元気。子供はまだ小さいから入院してるけど、姉貴が今日退院して、そのお祝いで行って来た」
「そうだったんだね~。おめでとうございます」
「二十四でおじさん」
「フフッ、いいじゃない、お祝い事は幾らあっても」

彼のご実家からお裾分けして貰ったお寿司をご馳走になる。

「わぁ~っ、赤ちゃんかわいいっ!」

お姉さんから送られて来た赤ちゃんの写メを見せて貰った。
小っちゃくて色白の女の子。

「赤ちゃんって、ホント天使だよね~」
「璃子さんも天使欲しいの?」
「そりゃあねぇ~……って、今すぐじゃないからっ」
「しまった!みたいな焦る璃子さん、めっちゃかわいい」
「っ……」

誘導尋問に軽く引っかかってしまった。
妖艶な眼差しに動揺してしまう。

恥ずかしさを紛らわすために視線を逸らした、その時。
ピンポーン。
呼び鈴が鳴った。

「誰だろ、こんな時間に」

玄関へと向かう彼。
そんな彼をお茶を啜りながら見据えた。

「えっ……何で、お前いんの?っつーか、何で俺んち知ってんの?」
「悠真のことなら、何でもお見通しだよ~」

リビングドアが半開きになっていて、玄関での会話が筒抜けになっている。
“悠真”……と呼ぶ声に聞き覚えがある。

「お前、いい加減にしろよ、通報すんぞっ」
「えーなんで~?遊びに来ただけじゃない」
「呼んでねーし、約束してねーし。ってか、お前と会う理由がねーだろ」
「えー別に理由なんてよくな~い?会いたいから会いに来たんじゃん」

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