『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

このパターンで来たか。
敵情視察とでもいうのか。
近づいて親しくなって、しれっとした顔で攻撃するタイプ。

宣戦布告とも取れる前回のやり取りがあり、その後に彼の自宅での一件を考えると……。
絵に描いたようなオーソドックスなやり方に、返す言葉を吟味していた、その時。

「申し訳ありません。この後に打ち合わせがありまして」
「そうですか」

先に八神くんが断ってくれた。
黙々と片付けをしている彼を一瞥し、手元の資料に視線を落とした、次の瞬間。

「白井さんって、ヨツバ(自動計量機の最大手企業)の遠藤さんとご婚約なさってたんですね」
「ッ?!!」

森野さんの言葉に、体が完全に硬直した。

何故、それを知ってるの?
うちの社員に聞き込み調査でもしたのだろうか?
しかも、元彼の情報を八神くんのいる前でわざとした……?

「その前の恋人は、確かスーリール(大手量販店)の島本さんだったかしら?」
「……」

元彼情報なら社内の人間に聞けば分かりそうなもの。
だけど……、前々彼氏の情報なんて、特定の人間しか知らない情報だよ。

怖い、何これ、ホラーだよ。
背筋がゾクゾクとする感覚に陥る。

「どちらも美形で、白井さ「そこまでにしろっ!!それ以上何か言ったら、法的処置取るから」
「……まだ序の口だったのに」

ボソッと呟かれた言葉に恐怖が植え付けられる。

序の口?
どんな手を使って得たのか、想像するのも恐怖でしかない。

……ちょっと、吐き気がして来た。

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