『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
四月の年度替わりにあわせて、外食業を関連とする企業のリニューアルや新規事業の立ち上げが行われることが多い。
それに伴い、一年で一番忙しい時期を迎えていた。
「白井、明後日のチーフ会議、三十分くらい遅れる」
「えぇ~、私も打ち合わせ入ってて、少し遅れそうなのに~っ」
璃子さんに宣伝営業部の黒川チーフが声をかけて来た。
「市川と松雪にでも言っとけ」
「自分ですればいいじゃないっ」
「お前のダチだろ」
「会社の同僚でしょ!」
「あー分かったわかった、すりゃあいいんだろ」
「もうっ、忙しいんだから、いちいち声かけて来ないでっ」
くそ忙しい時期に、わざわざ構ってアピールしやがって。
お前の部署はワンフロア下なんだよ。
そんな不要な声掛けするために、エレベーター使って電気使用量を増やしてんじゃねーよ。
あー腹が立つ。
俺の目と鼻の先でいちゃつきやがって。
お前の出る幕じゃねーのに。
「八神くんっ、悪いんだけどこれ、経理に出して来て貰える~?」
「はーい、いっすよ~」
璃子さんの指示なら、何でもしまーす♪
璃子さんから部署の出張経費の明細表を手渡され、エレベーターへと向かうと。
「今一機点検中だから、時間かかるぞ」
「……急ぎではないんで」
「若いんだから、階段使えよ」
「黒川チーフは、体形維持のためにも軽い運動した方がいいんじゃないですか?」
「フッ、生意気なやつだな」
ワンフロアくらい階段使えっての。
経理は二階だから、俺はエレベーター使うけどね。
漸く来たエレベーターに乗り込んだ、その時。
「お前、白井が好きだろ」