『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました


『検査の結果、疲労骨折と診断されました。これから処置して帰ります』

璃子さんからのメールを見て、心臓が止まるかと思った。
疲労骨折って何?
今朝は普通にしてたのに。

「すみませんっ、お先に失礼しますっ!!」
「お疲れさーん」

定時で仕事を切り上げ、璃子さんがいる病院へと急ぐ。
メールの受信が十六時四十分だから、タクシーで向かえばまだ間に合うはず。

部長には連絡を入れたとメールにあったから、たぶん明日からの仕事の采配は部長がしてくれるはず。
いや、こういう時は、仕事は二の次だろ。
健康あっての仕事だよ。

流れのタクシーを拾う。

「すみませんっ、**病院まで」

慌てたって仕方ないのは分かってる。
だけど、疲労骨折をするほど、痛みに耐えてたのかと思ったらいてもたってもいられない。

「すみません、急いで貰えますか?」

逸る気持ちが抑えきれない。
毎日傍にいたのに、何も気づけなかった不甲斐なさに押し潰されそうになる。



「璃子さんっ!」

病院の会計窓口前にいた璃子さん。
左足にギブスがされていて、松葉杖が椅子に立てかけられていた。

「ごめんね?」
「何で謝るんですか」
「こんな姿見せたくなかったんだけど」
「どんな姿でも、璃子さんは璃子さんですよ」

自責の念から涙目になる璃子さんの頭を優しく撫でる。

「痛みはあるんですか?」
「さっき痛み止めの注射して貰ったから、今はない」
「じゃあ、薬が効いてるうちに帰りましょうか」
「……うん」

いつもの凛々しい璃子さんではなく、気落ちしてる璃子さんが儚げで。
これはこれで可愛いと思えてしまう。

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