『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
八神くんが病院に迎えに来てくれて、タクシーで帰宅する。
冷蔵庫にある食材で簡単な夕食を作ってくれる彼。
しかも、近くのコンビニでレトルト食品や冷食を沢山買って来てくれた。
「璃子さん、お風呂どうします?袋かけてシャワーします?それとも、拭くだけにします?」
「……どうしようかな」
足にゴミ袋を被せて水が入らないようにすればシャワーくらいはできる。
過去にも経験があるから、要領は得てるんだけど。
こういう時くらいしか、甘えられない性格なのが恨めしい。
「どうしたいか、言って下さい」
もうっ、またそうやって私を試そうとする。
ソファに腰掛けている私の前にしゃがみ込んだ彼は、上目遣いで尋ねて来た。
「……シャワーしたい」
「はい、仰せのままに」
五歳も年下の子の言葉に、いちいちきゅんとしちゃう。
最近、完全に脳が溶けてるんじゃないかと思えてならない。
「お風呂と着替えを用意して来るんで、ちょっと待ってて下さいね」
「……ごめんね?」
「謝るのなし。こういう時は“ありがとう”ですよ、璃子さん」
「っ……、ありがとっ」
「どういたしまして♪」
にっこりと微笑む八神くんが可愛く見える。
あ~も~っ、これって、“好き”になっちゃったんだろうか?
八神くんが用意してくれている間に、部長へのフォロー依頼の詳細データを作成していた、その時。
室内に訪問者を知らせるチャイムが鳴った。
あっ、どうしよう。
ドアホンまで結構な距離がある。
「あ、俺が出ますね」
「えっ…」
チャイムを聞きつけた八神くんがドアホンの前に。
「誰?知らない人??」