『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「誰だったの?」
「黒川チーフ」
「え?」
「これ貰いました」
「もう帰ったの?」
「帰しちゃまずかったですか?」
「え……、あぁ、ううん、別に」

俺の言動に少しだけ動揺する璃子さん。
俺の気持ちを知ってますよね?

「俺がいるのに、他の男を家に上げようとか、考えたりしないですよね?」
「っ………ん」
「こういうことがあるから、秘密にするのはデメリットだらけなのに」
「っ……」
「いい加減、自覚して下さいね?……先輩は物凄~~く、モテるんですから」

膝の上でノートパソコンを開いてる璃子さんを追い詰めるみたいに迫って。
有無を言わさずパタンとパソコンを閉じる。

何度だって植え付けますよ?
少しでも警戒心が強化されるなら。

ほんの少し頬を赤らめる璃子さんを見下ろし、おでこにキスを落とす。
足が不自由って、案外いいかも。
俺の腕からするりと逃げるようなことがない今は、いつもより少しだけ満足感が増す。

膝の上のノートパソコンをそっと脇に避けて、背もたれに手をつき、キス待ち顔を強請るみたいに迫る。
ほらほら、早く目を瞑んなきゃダメだよ?

じりじりと迫るように顔を近づけると、ゆっくりと瞼が閉じられた。
先輩のキス待ち、すげぇエロいんだけど。

そっと唇を重ねた、その時。
テーブルの上に置かれた璃子さんのスマホがブブブッと震え出した。

スマホの呼び出しを無視して、甘噛みして、啄む。

「ちょっ……と、ストーップ!!」
「んっ…」

先輩の手のひらが俺の口元を覆った。
キスの途中なのに。
呼び出しに負けた。

「はい、もしもし?……あ、先生。先ほどはありがとうございました。……え?……あ、はい。……いえ、大丈夫です」

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