『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「誰ですか?」
「……病院の先生」
「何でわざわざかけて来たんですか?」
「一人で大丈夫か、心配だったみたい」
「どうして、一介の医師が個人の携帯にかけて来るんですか?」
「………前も同じ所をやったことがあって」
「だからって、何で?」

どうしよう。
これ以上、秘密にしておけないよね?

まっすぐ射抜いて来る瞳から逃れられない。

「主治医……?みたいなものなんだろうけど」
「……」
「その人と以前住んでたマンションが同じだったの」
「は?」
「二つ上の階に住んでて、カルテの住所が同じだったから、前回の時にちょっとお世話になって」
「……お世話って?」
「色々……?」
「色々って?」

別にやましいことがあるわけじゃない。
だけどちょっとだけ、こんな風に嫉妬されるのが心地よく感じてる。

「食べ物を買って来て貰ったりだとか、ゴミ出しだとか……?」
「それだけ?」
「……ん、それだけ」
「ホントに?」
「ん」
「一緒にお風呂入ったり、着替えを手伝「ないからっ!」
「……フッ」
「何で笑うの?」
「いや、自分で仕掛けといて、必死だなぁと思って」
「っ……」
「可愛いですよ」
「揶揄わないで」
「ホントに可愛いです」

もう認めるしかないのかな……。
八神くんを“好き”だって。

「ご飯先にします?それともシャワー?」
「他に選択肢はないの?」
「……ありますけど、拒否権ないですよ?」
「……ん、いいよ」

色香を纏った視線にあてられたからだ。
別に私から望んで頼んでるんじゃない。

黒川くんにも、椎名先生にも嫉妬心丸出しの彼の言動に絆されてるだけ。
そうに違いない。

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