『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
ソファに横たわる私に覆いかぶさるみたいにして、熱い視線を浴びせて来る。
「璃子さんって、相当ドMですよね」
「へ?」
「こんな足の状態で俺を求めるとか……」
「っ……」
「いいですよ、ギリのところまで付き合いますから」
「っっっ」
ぺろりと舌なめずりした彼は、少し強引に唇を重ねて来た。
翻弄されてるなぁ、私。
今まで相手に合わせる恋愛しかして来なかった私は、こんな風に追いかけられる恋をしたことがない。
だからなのかな。
言葉一つで一喜一憂してしまうのは。
贈られる言葉は当たり前だと思ってた。
恋人なんだから、甘く囁かれるのも当然だと思ってたのに。
八神くんからのそれは、糖度が格段に高い。
純度というのだろうか。
ちょっぴり甘い恋愛しかして来なかった人間に、とろとろに蕩けさせるような甘さの刺激に、五歳差ということも忘れてしまいそう。
「璃子さん、もっと…」
「……っん」
「全然足んない……」
「っ……」
彼のキスに応えてるつもりなのに。
足りないって……どうしたらいいの??
後頭部を支える指先に力が籠る。
更に深くなる口づけに、どんどん息苦しくなってゆく。
こんなにも執拗に求められるようなキスをしたことがない。
キスだけで、限界に陥るって……。
「ゃっ……待っ…てッ」
彼の口を手で覆った。
けれど、すぐさま簡単に阻まれて…。
「………いいとこだったのに」
「っ……」
ダメだ、ムリだ、手に負えない!
完全に踊ろされてる……。
「十、九、八、七…「えっ、何でカウントしてんの?」
「待ってって言われたから、ちょっとだけ待つことにした」
「っ……」
「六、五…「え、待って待って!」
「……何?」
楽し気な彼の表情にイラっとする。