『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました


「遅くなりました。今から、朝のミーティングを始めます」

えっ、璃子さんは?

朝のミーティングを仕切る浅沼部長。
午前中の打合せ資料の確認をしてて、璃子さんが不在なのに気が付かなかった。

「白井さんは体調不良により、数日間お休みとなります。確認業務は私の方でしますので…――…」

体調不良って……?
聞いてないんだけど。

数日前の様子もおかしかったし、昨日も少し疲れてる感じはしてた。
……何で、何も言ってくれないんだよ。

ミーティングを終え、スマホを確認するが、璃子さんからの連絡は一切ない。
俺、そんなに頼り甲斐がない?
机に向かい、溜息が零れる。

今すぐメールを打ちたいけれど、就業中に送信したら絶対怒られる。
璃子さんはそういう人だ。



昼休みに何度も電話を入れても繋がらないし、メールを入れても既読にもならない。
悶々としながら午後の仕事をこなし、定時ジャストに電話をかける。

プルルルルッ、プルルルルッ…。

繋がらない。
何度も何度もかけてるのに、留守電に切り替わってしまう。

もしかして、部屋で倒れてるとか?
いてもたってもいられず、マンションへと向かいながら、ストーカーだと思われるくらいしつこいくらいにメールも送って。



ピンポーン、……ピンポーン。
何度鳴らしても、うんともすんとも言わない。

メールも相変わらず既読にもならないし。
本当にどうしたんだろう。

こういう時、本当の恋人なら合鍵くらい持っててもおかしくないのに。
俺と璃子さんの関係は、表面上の恋人なのかもしれない。

好きな人の体調不良でさえ、気付けないなんて……。

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