『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
「璃子のこと、本当に好きなんだね」
「はい」
「ハハッ、即答なんだ」
「はい。迷いはないですから」
もう何かを理由に迷ったり諦めたりしたくない。
「あの子ね、今仕事を辞めるか、凄く悩んでる」
「え?」
「辞めたくはないけど、辞める選択肢もあるんじゃないかっていうやつなんだけどね」
「それ、どういう意味ですか?」
「女性の三十歳は色々悩むことも多いのよ」
「………」
「前にも話したよね?キラキラしてる璃子じゃなくても愛せるか?って」
「……はい」
「あの時と同じ質問をするね?輝いてない璃子でも、ずっと愛せる?」
「はい」
「即答なんだ」
「はい。……どんな璃子さんでも、すげぇ好きなんで」
「璃子は幸せ者ね」
松雪チーフの声音は、以前カフェで話した時より穏やかだ。
「今あの子、ヒビの入った硝子みたいな状態だから、傍で支えてあげて」
「……俺に務まりますか?」
「ん、十分でしょ」
太鼓判というやつだろうか?
璃子さんの親友から、お墨付きを貰えたようだ。
「璃子がいる場所、メールで送るね?今からだと、急がないと会えないかも」
「へ?」
「とにかく、送る!後は八神くん次第だから」
「……はい」
何だかよく分からないけれど、『急がないと会えない』という言葉が引っかかった。
スマホの画面をじっと見据えていた、その時。
松雪チーフからショートメールが送られて来た。
「ッ?!!……病院??」