『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
森野さんの件は、八神くんが対処してくれたと聞き、凄く安堵した。
陰口を叩くとか、事務用品を隠されるとか、頼んだ資料が後回しにされるとか。
嫌がらせなんてホント苛めの延長戦みたいなものばかりだったから、あの子のように、あらゆるところに手を回してでも手に入れたいと思う感情に支配された人に出会ったことなくて。
八神くんが言うように『危険』という言葉が一番マッチしている。
言葉では言わないけれど、彼が過ごした日々が少し分かった気がした。
誰にでも、人には言えない傷があるんだと。
彼が私の心の傷を癒してくれたように。
私が彼の心の傷を癒せる日がくればいいなぁと。
「お風呂にする?それとも、ご飯にする?」
「………っ」
キッチンでスープを温めていた私は、ダイニングの傍にいる彼に声をかけた。
「ん?……何?もう一回言って」
「??……お風呂にする?それとも、ご飯にする?」
「っっ」
「え、ちょっと、何なのよ」
ネクタイを緩めていた彼がキッチンへと来て、彼にぎゅっと抱き締められた。
「今の、凄くいいっ……。新婚さんみたいで、萌えた」
「……っ」
いつもなら『シャワーしておいで~』なんだけど、何気なく言った言葉がそんな相乗効果を得るだなんて。
「一緒に入る?」
「さっき入ったからいい」
「もう一度入ればいいじゃん」
「やだよ」
「ケチ」
「ご飯あげないよ?」
「うぅっ……」
唇を尖らせる八神くん。
ホントこういう仕草が子供っぽくてかわいい。
彼のネクタイを解いてあげて、ジャケットを脱がせる。
「早く戻って来てね♪……チュッ」
わざとらしく新妻気分のような素振りをしてみせる。
今日だけ特別だからね?
「うっわぁっ、璃子さん、今日めっちゃエロいっ……。速攻で浴びて来る!」
「あはっ、しっぽがフリフリしてるのが見えた」