そんな理由で婚約破棄? 追放された侯爵令嬢は麗しの腹黒皇太子に溺愛される
12 帝国の若き獅子
まさか・・・・・・皇族?
まばゆい笑顔でこちらに歩んでくる男性は、よく見れば刺繍のほどこされた上質なドレスシャツを身につけていたし、腕を見たら・・・・・・綺麗に両腕をペイントしていたのよ。このブリュボン帝国でそれをするのは、王族だけだということを、私は祖国で学んでいた。ペイントは天然の色素や木の樹皮、鉱物の粉末などが使われ芸術的な文様や花が描かれる。それは周囲の人々に対して尊厳や地位を示すための手段として使用されるのよ。
だから、この方は王族で人々から尊敬を集めている男性ということになる。えぇっと、たしかこの国の皇子は三人いたはず。このような田舎をのんびりと歩いている彼はきっと三男ね。皇帝になる未来がないから、こうして民に気さくに接しているのだわ。
「さぁ、俺の馬車に乗って一緒になにか食べよう。ここは暑いし、陽に浴びたらその白い肌が赤くなってしまうだろう。早く日陰に行こう。なぜ日傘を持ってこなかったんだ? 少なくとも帽子ぐらいはかぶらないと。うん、まずは帽子職人のところに寄ろう」
「いいえ、私はそこよりも、質物商に行きたいのです」
「え? 質物商だって? なにを売るつもりだい?」
「それは・・・・・・言いたくないですし、恐れながら殿下には関係のないことだと思われます」
彼はおかしそうに片眉をあげて笑った。
「そうだな。さっきまでは関係なかったが、今は一緒に馬車に乗ってこれから食事もする仲だ。関係はおおいにあるさ。なにを売りたいのか言ってごらん」
私が黙っているとアデラインが代わりに、いらなくなったドレスを売りたいことを説明する。見せてほしいと言うので、私は仕方なく自分の馬車まで彼を連れていき広げてみせた。淡い色合いの黄色、水色、ピンクの三着の夜会服だった。どれもまだまだ新品に近い綺麗なものだった。
「どれも可愛いし、君にぴったりだ。俺が買って君にプレゼントしよう。さぁ、これが代金だ、受け取って。そうしていったん俺の方にそのドレスをよこしてくれ。良い子だ。今度は君が俺からドレスを受け取り礼を言う。さぁ、言ってごらん」
「?」
「ありがとう、とひと言だけ言えばいいのさ。簡単だろう?」
「あ、ありがとう・・・・・・ございます?」
「ははっ。最後の?は要らないな。さぁ、これでもう質物商には行かなくて済んだ。俺の馬車に乗った方が良い。御者も一緒に来ればいいさ。腹が減っただろう? うまいものを食わせてやるから、お前も来るんだ」
最後の言葉は私を連れてきてくれた御者に投げかけたもので、御者は満面の笑みでうなづいた。
「輝ける太陽、ブリュボン帝国の若き獅子、ヴァルナス皇太子殿下のおともができることは大変光栄でございます!」
膝を折り頭を地面にこすりつけんばかりに挨拶をした。
え? ヴァルナス皇太子殿下なの? 私はルコント王国の王太子妃教育をずっと受けてきた身だ。皇太子殿下の名前ぐらいは知っている。
「失礼いたしました。大変無礼なことを申し上げてなんとお詫びして良いやら。申し訳ございませんでした」
私はカーテシーをしながらも震えていた。ブリュボン帝国のヴァルナス皇太子といえば戦では負け知らず、「風に舞う麗しき戦士」と称され冷酷無比なことでも有名だった。
やっぱりこの美しい顔の下は残酷な考えでいっぱいなんだわ。
私が震えているのに気づき顔を覗き込み、次の瞬間にはしっかりと彼のたくましい腕に横向きに抱きかかえられていた。
お、お姫さま抱っこ? はっ、恥ずかしいぃーー
まばゆい笑顔でこちらに歩んでくる男性は、よく見れば刺繍のほどこされた上質なドレスシャツを身につけていたし、腕を見たら・・・・・・綺麗に両腕をペイントしていたのよ。このブリュボン帝国でそれをするのは、王族だけだということを、私は祖国で学んでいた。ペイントは天然の色素や木の樹皮、鉱物の粉末などが使われ芸術的な文様や花が描かれる。それは周囲の人々に対して尊厳や地位を示すための手段として使用されるのよ。
だから、この方は王族で人々から尊敬を集めている男性ということになる。えぇっと、たしかこの国の皇子は三人いたはず。このような田舎をのんびりと歩いている彼はきっと三男ね。皇帝になる未来がないから、こうして民に気さくに接しているのだわ。
「さぁ、俺の馬車に乗って一緒になにか食べよう。ここは暑いし、陽に浴びたらその白い肌が赤くなってしまうだろう。早く日陰に行こう。なぜ日傘を持ってこなかったんだ? 少なくとも帽子ぐらいはかぶらないと。うん、まずは帽子職人のところに寄ろう」
「いいえ、私はそこよりも、質物商に行きたいのです」
「え? 質物商だって? なにを売るつもりだい?」
「それは・・・・・・言いたくないですし、恐れながら殿下には関係のないことだと思われます」
彼はおかしそうに片眉をあげて笑った。
「そうだな。さっきまでは関係なかったが、今は一緒に馬車に乗ってこれから食事もする仲だ。関係はおおいにあるさ。なにを売りたいのか言ってごらん」
私が黙っているとアデラインが代わりに、いらなくなったドレスを売りたいことを説明する。見せてほしいと言うので、私は仕方なく自分の馬車まで彼を連れていき広げてみせた。淡い色合いの黄色、水色、ピンクの三着の夜会服だった。どれもまだまだ新品に近い綺麗なものだった。
「どれも可愛いし、君にぴったりだ。俺が買って君にプレゼントしよう。さぁ、これが代金だ、受け取って。そうしていったん俺の方にそのドレスをよこしてくれ。良い子だ。今度は君が俺からドレスを受け取り礼を言う。さぁ、言ってごらん」
「?」
「ありがとう、とひと言だけ言えばいいのさ。簡単だろう?」
「あ、ありがとう・・・・・・ございます?」
「ははっ。最後の?は要らないな。さぁ、これでもう質物商には行かなくて済んだ。俺の馬車に乗った方が良い。御者も一緒に来ればいいさ。腹が減っただろう? うまいものを食わせてやるから、お前も来るんだ」
最後の言葉は私を連れてきてくれた御者に投げかけたもので、御者は満面の笑みでうなづいた。
「輝ける太陽、ブリュボン帝国の若き獅子、ヴァルナス皇太子殿下のおともができることは大変光栄でございます!」
膝を折り頭を地面にこすりつけんばかりに挨拶をした。
え? ヴァルナス皇太子殿下なの? 私はルコント王国の王太子妃教育をずっと受けてきた身だ。皇太子殿下の名前ぐらいは知っている。
「失礼いたしました。大変無礼なことを申し上げてなんとお詫びして良いやら。申し訳ございませんでした」
私はカーテシーをしながらも震えていた。ブリュボン帝国のヴァルナス皇太子といえば戦では負け知らず、「風に舞う麗しき戦士」と称され冷酷無比なことでも有名だった。
やっぱりこの美しい顔の下は残酷な考えでいっぱいなんだわ。
私が震えているのに気づき顔を覗き込み、次の瞬間にはしっかりと彼のたくましい腕に横向きに抱きかかえられていた。
お、お姫さま抱っこ? はっ、恥ずかしいぃーー