そんな理由で婚約破棄? 追放された侯爵令嬢は麗しの腹黒皇太子に溺愛される
19 サスペンダー公爵令嬢の本性
「まぁ、いいさ。番のことがまるでわかっていないようだ。兄上の愛が信じられないのか? あの兄上が振られるなんて愉快だ」
ヴァルナス皇太子殿下を兄上と呼ぶのなら、この方はブリュボン帝国の皇子の一人だ。お名前を尋ねるとラヴァーンだと教えてくださった。そのお名前の皇子ならば、第二皇子殿下に違いない。皇帝の座に最も近い二番手の男性。
「振るのではありません。身を引くだけです」
「同じことさ。まぁ、一時的に身を隠す場所なら提供できるかな。あの無敵で至高な存在がへこむ姿はちょっとみものだな。いいさ、少しだけかくまってやろう」
ヴァルナス皇太子殿下に似ているようで似ていない男性。私を珍獣のように眺めて品定めしているようだ。同じ兄弟でもヴァルナス皇太子殿下とは全く違う印象だった。私が身を隠した場所は聖騎士団が管轄する領地で、皇帝といえども迂闊には足を踏み入れることができない場所だった。
ただ、ここもあまり土壌は良くないようで、草も木も生えてはいない。私はしばらくそこに身を寄せ、自分のできることをしていた。聖騎士様達は私がここにいることで動揺していたけれど、メイドと同じような格好で雑用をする私に慣れていった。
きっとヴァルナス皇太子殿下だって私に会えなければ忘れていくはず。どんなことも時間が解決していくのよ。ところが、私が身を隠して五日もしないうちに、ヴァルナス皇太子殿下が倒れたという噂を耳にした。
「いったい、なにがあったのですか?」
私の問いかけに、聖騎士団員の方々がため息をついた。
「ステファニー様が原因ですよ。水も口にしない、眠りもしない男が元気でいられると思いますか? 番とはそういうものです。魂の一部が死んでしまうのですよ」
「まさか・・・・・・きっとサスペンダー公爵令嬢が慰めてくれるわ」
周りにいた聖騎士団員達が一斉に「うぇっつ」と奇声を発した。
「あんな尻軽女に殿下が慰められるわけないですよ、彼女には恋人が3人はいる」
「いや、5人だろう? 彼女の取り巻きは20人はくだらないはずさ」
「嘘だわ。だって彼女は泣いていたのよ。ヴァルナス皇太子殿下にずっと幼い頃から憧れていたって」
「あっはは。ヴァルナス皇太子殿下は次期皇帝で、あれだけの美貌に教養もあり剣の達人です。すべてが揃った男は逃がしたくないでしょうね。ただ、散々他の男達と遊んでいるようですがね」
「本人はばれていないつもりだろうけど、こちらからすれば、ばればれだぜ」
「だよな、あのような女性は皇太子妃には最も相応しくない。ヴァルナス皇太子殿下もずっと以前からサスペンダー公爵令嬢の火遊びに気づいていたさ」
「だから、嫌っていたのですか?」
「いいや、興味がなかったのだよ。好きも嫌いもない、と兄上はおっしゃっていた。異性として意識していないから眼中になかったのだろうな」
ラヴァーン皇子殿下が私達の会話に加わった。
「兄上の様子だけでも見に行こう。見ればわかるさ」
いったい、なにがわかると言うのだろう?
翌々日、宮殿に足を踏み入れて私が見たものは、すっかりやつれたヴァルナス皇太子殿下だった。
ヴァルナス皇太子殿下を兄上と呼ぶのなら、この方はブリュボン帝国の皇子の一人だ。お名前を尋ねるとラヴァーンだと教えてくださった。そのお名前の皇子ならば、第二皇子殿下に違いない。皇帝の座に最も近い二番手の男性。
「振るのではありません。身を引くだけです」
「同じことさ。まぁ、一時的に身を隠す場所なら提供できるかな。あの無敵で至高な存在がへこむ姿はちょっとみものだな。いいさ、少しだけかくまってやろう」
ヴァルナス皇太子殿下に似ているようで似ていない男性。私を珍獣のように眺めて品定めしているようだ。同じ兄弟でもヴァルナス皇太子殿下とは全く違う印象だった。私が身を隠した場所は聖騎士団が管轄する領地で、皇帝といえども迂闊には足を踏み入れることができない場所だった。
ただ、ここもあまり土壌は良くないようで、草も木も生えてはいない。私はしばらくそこに身を寄せ、自分のできることをしていた。聖騎士様達は私がここにいることで動揺していたけれど、メイドと同じような格好で雑用をする私に慣れていった。
きっとヴァルナス皇太子殿下だって私に会えなければ忘れていくはず。どんなことも時間が解決していくのよ。ところが、私が身を隠して五日もしないうちに、ヴァルナス皇太子殿下が倒れたという噂を耳にした。
「いったい、なにがあったのですか?」
私の問いかけに、聖騎士団員の方々がため息をついた。
「ステファニー様が原因ですよ。水も口にしない、眠りもしない男が元気でいられると思いますか? 番とはそういうものです。魂の一部が死んでしまうのですよ」
「まさか・・・・・・きっとサスペンダー公爵令嬢が慰めてくれるわ」
周りにいた聖騎士団員達が一斉に「うぇっつ」と奇声を発した。
「あんな尻軽女に殿下が慰められるわけないですよ、彼女には恋人が3人はいる」
「いや、5人だろう? 彼女の取り巻きは20人はくだらないはずさ」
「嘘だわ。だって彼女は泣いていたのよ。ヴァルナス皇太子殿下にずっと幼い頃から憧れていたって」
「あっはは。ヴァルナス皇太子殿下は次期皇帝で、あれだけの美貌に教養もあり剣の達人です。すべてが揃った男は逃がしたくないでしょうね。ただ、散々他の男達と遊んでいるようですがね」
「本人はばれていないつもりだろうけど、こちらからすれば、ばればれだぜ」
「だよな、あのような女性は皇太子妃には最も相応しくない。ヴァルナス皇太子殿下もずっと以前からサスペンダー公爵令嬢の火遊びに気づいていたさ」
「だから、嫌っていたのですか?」
「いいや、興味がなかったのだよ。好きも嫌いもない、と兄上はおっしゃっていた。異性として意識していないから眼中になかったのだろうな」
ラヴァーン皇子殿下が私達の会話に加わった。
「兄上の様子だけでも見に行こう。見ればわかるさ」
いったい、なにがわかると言うのだろう?
翌々日、宮殿に足を踏み入れて私が見たものは、すっかりやつれたヴァルナス皇太子殿下だった。