そんな理由で婚約破棄? 追放された侯爵令嬢は麗しの腹黒皇太子に溺愛される
38 荒れた地で踊る皇太子妃ーそのさん
武装した民衆が馬車の周りを囲み、私とチェリーナ皇女が馬車に乗っているのを見て、ニヤリと笑った。
「ずいぶん綺麗な女がいるなぁ。お貴族様だろう? 大人しくその馬車と金目のものを置いていけよ」
そう言った男の口を先ほどのツルがビタンっと叩く。
「痛いなぁ。くっそ、この植物なんだって俺の口を叩いたんだよ! う、うっわぁーー、なんだこいつら?」
馬車の周りに緑が生い茂り私達が乗っている馬車を守るようにして包み込む。そうしておいてから、護衛騎士達を助けるように植物達がツルを伸ばして暴徒達を懲らしめた。
足や手にからみつきその自由を奪ったり、時にはムチのようにしなって暴徒達を打ち付けていく。緑の奇跡は闘いにも有効みたい。最終的にはツルが彼らを縛り上げていた。
「俺達はブリュボン帝国の皇太子と皇太子妃だ。それを襲おうとしたお前達の罪は重い。本来なら死刑だが、まぁ、今回は許してやる。どこへなりとも行って良い」
「ひっ。もしかして、では、そちらの方はステファニー皇太子妃様ですか? やばいぞ、だからこの植物達が守ったのか」
暴徒の中心人物らしき男が私達にペコペコと頭を下げて、涙目になって後悔の言葉を口にする。その頭を植物のツルが何度もペシペシと叩いていた。
「てっきりルコント王国の忌々しい貴族だと思い込んでいました。この国にブリュボン帝国の皇太子夫妻が来るなんて誰も知りませんよ」
「そうか。このルコント王国の伯爵以上の貴族達には書簡を送ったのだが、民衆には伝わっていないのか。貴族達が気を利かせて民衆にまで知らせたと思い込んでいたが、壊れかけた国というのはなにもかもが上手く機能しないのだな」
「ここから先もおいら達のような荒くれ者が徒党を組んで金持ちを襲っていますぜ。おいら達も『緑の妖精王の愛し子』を守らせてください。おいら達の畑がまた作物で溢れるようになるのが一番なんだ。もともとこのあたりはこんな砂漠みたいな場所ではなかったんですよ」
「お前らの気持ちは受け取るが妃と妹を妙な目つきで見たから仲間にはできん。本来なら万死に値するからな」
ヴァルの言葉にまたツルが反応して、今度は男達の目の辺りをペシペシと叩いていた。ただその攻撃は悪戯をした子供を叱るように軽いものだったので、多分妖精王はこの者達をそれほど怒っていないように感じた。なので、私は彼らに訊いてみることにした。
「今までは真面目に農業に取り組み、地道に生きてきた方達なのでしょう?」
「はい、おいら達は果樹園を営んでいた農園主だったんです」
話を聞けば農作物が全く収穫できなくなって子供が食べる物までなくなったが、王妃達を処刑してからブリュボン帝国からいろいろな物資が届き、いっときは生活が楽になったという。ところが最近はブリュボン帝国からの援助が少なくなって、やはり民達は満足に食べることもできないと愚痴りだした。
「以前と変わらぬ援助をしているぞ。おもだったルコント王国の貴族達には領民に配るようにと物資を送り続けているし、食料も同じ事だ」
「でしたら、誰かが民衆に配るべき物を独り占めしているのですわ。それは複数の有力貴族かもしれませんし、その部下達かもしれません。なんにしても許せませんわ。やはりこの国はこのままではいけません」
「そうだな。いっそうのことステファニーが女王になれば良い。きっとこの地の妖精王はそれを望んでいるのかもしれないぞ」
ヴァルの冗談に馬車を守っていた緑達が途端にポンポンっと花を咲かせた。まるでおとぎ話にでてくるように私達の馬車は花で飾られた。
私は彼らを許すようにヴァルに説得し、仲間になった彼らはとても従順だった。途中で何度も同じような集団に出くわして闘いながらも仲間がどんどん増えていくのだった。
「ずいぶん綺麗な女がいるなぁ。お貴族様だろう? 大人しくその馬車と金目のものを置いていけよ」
そう言った男の口を先ほどのツルがビタンっと叩く。
「痛いなぁ。くっそ、この植物なんだって俺の口を叩いたんだよ! う、うっわぁーー、なんだこいつら?」
馬車の周りに緑が生い茂り私達が乗っている馬車を守るようにして包み込む。そうしておいてから、護衛騎士達を助けるように植物達がツルを伸ばして暴徒達を懲らしめた。
足や手にからみつきその自由を奪ったり、時にはムチのようにしなって暴徒達を打ち付けていく。緑の奇跡は闘いにも有効みたい。最終的にはツルが彼らを縛り上げていた。
「俺達はブリュボン帝国の皇太子と皇太子妃だ。それを襲おうとしたお前達の罪は重い。本来なら死刑だが、まぁ、今回は許してやる。どこへなりとも行って良い」
「ひっ。もしかして、では、そちらの方はステファニー皇太子妃様ですか? やばいぞ、だからこの植物達が守ったのか」
暴徒の中心人物らしき男が私達にペコペコと頭を下げて、涙目になって後悔の言葉を口にする。その頭を植物のツルが何度もペシペシと叩いていた。
「てっきりルコント王国の忌々しい貴族だと思い込んでいました。この国にブリュボン帝国の皇太子夫妻が来るなんて誰も知りませんよ」
「そうか。このルコント王国の伯爵以上の貴族達には書簡を送ったのだが、民衆には伝わっていないのか。貴族達が気を利かせて民衆にまで知らせたと思い込んでいたが、壊れかけた国というのはなにもかもが上手く機能しないのだな」
「ここから先もおいら達のような荒くれ者が徒党を組んで金持ちを襲っていますぜ。おいら達も『緑の妖精王の愛し子』を守らせてください。おいら達の畑がまた作物で溢れるようになるのが一番なんだ。もともとこのあたりはこんな砂漠みたいな場所ではなかったんですよ」
「お前らの気持ちは受け取るが妃と妹を妙な目つきで見たから仲間にはできん。本来なら万死に値するからな」
ヴァルの言葉にまたツルが反応して、今度は男達の目の辺りをペシペシと叩いていた。ただその攻撃は悪戯をした子供を叱るように軽いものだったので、多分妖精王はこの者達をそれほど怒っていないように感じた。なので、私は彼らに訊いてみることにした。
「今までは真面目に農業に取り組み、地道に生きてきた方達なのでしょう?」
「はい、おいら達は果樹園を営んでいた農園主だったんです」
話を聞けば農作物が全く収穫できなくなって子供が食べる物までなくなったが、王妃達を処刑してからブリュボン帝国からいろいろな物資が届き、いっときは生活が楽になったという。ところが最近はブリュボン帝国からの援助が少なくなって、やはり民達は満足に食べることもできないと愚痴りだした。
「以前と変わらぬ援助をしているぞ。おもだったルコント王国の貴族達には領民に配るようにと物資を送り続けているし、食料も同じ事だ」
「でしたら、誰かが民衆に配るべき物を独り占めしているのですわ。それは複数の有力貴族かもしれませんし、その部下達かもしれません。なんにしても許せませんわ。やはりこの国はこのままではいけません」
「そうだな。いっそうのことステファニーが女王になれば良い。きっとこの地の妖精王はそれを望んでいるのかもしれないぞ」
ヴァルの冗談に馬車を守っていた緑達が途端にポンポンっと花を咲かせた。まるでおとぎ話にでてくるように私達の馬車は花で飾られた。
私は彼らを許すようにヴァルに説得し、仲間になった彼らはとても従順だった。途中で何度も同じような集団に出くわして闘いながらも仲間がどんどん増えていくのだった。