再会した幼なじみと、ひとつ屋根の下
キーンコーン……
颯真の言葉は、予鈴によって中断されてしまう。
心菜「あ、やばい。もうすぐ授業始まっちゃう」
颯真「そ、そうだな」
ベッドから慌てて立ち上がる颯真。
颯真「こっ、心菜は、次の授業はここで休んでたら? 俺から先生に伝えておくし」
心菜「そうさせてもらおうかな。ありがとう」
颯真「それじゃあ、俺行くわ。あ、そうだ」
保健室の扉へと向かって歩いていた颯真が、心菜のほうへと戻ってくる。
心菜「どうしたの?」
首を傾ける心菜。
心菜の正面に立つと、颯真の整った顔が近づく。
颯真「ちょっと忘れ物」
颯真が保冷剤を持つ心菜の手を掴み、おでこからその手をそっとどけると。
露わになった心菜の赤いおでこに、颯真がチュッと軽くキスをした。
心菜「え」
颯真「早く良くなるように、おまじない」
心菜(お、おまじないって……)
心菜の顔が、発火したように熱くなる。
颯真「じゃあな」
心菜がしばらくフリーズしていると、颯真と入れ替わるようにして先生が保健室へと戻ってきた。
養護教諭「宮脇さん、おでこは大丈夫? 早くベッドに横になって休んでなさい」
心菜「は、い」
心菜(ていうか、さっきよりも余計におでこが熱いような。おでこだけでなく、顔も熱い)
心菜(それに颯真くん、さっき私に何を言おうとしていたの?)
先生に促されてベッドに横になるも、心菜は心臓がやけにドキドキして。
颯真のさっき言いかけたことがずっと気になって、なかなか寝つけなかった。
○学校・廊下
颯真が教室へと向かって早足で歩いている。
颯真(やっべー。『おまじない』とか言って俺、学校で何やってんだよ)
颯真(しかも……俺、無意識のうちに心菜に『好き』って言ってしまいそうになってたし。
あー、危ない。今は実習中なんだから、気をつけないと)
このときの颯真の顔も、やはり心菜と同様に赤く染まっていた。