再会した幼なじみと、ひとつ屋根の下
心菜(あ、やばい)
それからしばらく野菜を刻んでいるうちに、心菜の服の袖が落ちてきた。
心菜(今両手はふさがってるし、あと少しで刻み終えるのに。どうしよう)
迷っていると、隣で作業していた颯真がスっと心菜の背後に立ち、腕を伸ばす。
颯真「心菜、袖が落ちてる」
そう言うと、颯真はそっと心菜の腕をまくり上げてくれた。
ちょうど心菜の背中と颯真の胸が、ぴったりと密着する。
心菜(やばい。颯真くんに後ろから抱きしめられているみたいで、ドキドキする)
心菜が颯真にされるがままになっていると、耳元で颯真がぷっと吹き出した。
颯真「心菜、顔が真っ赤」
心菜「……っ」
颯真「りんごみたいに赤くなってる心菜も、ほんと可愛い」
頬を颯真に撫でられ、心菜の肩がぴくっと跳ねる。
颯真「やべぇ。あまり可愛いと、離したくなくなるんだけど」
心菜のお腹に、後ろから颯真の腕がまわされる。
心菜「そ、颯真くん?」
颯真「少しだけ、心菜のこと抱きしめててもいい?」
心菜「え?」
後ろから心菜を抱きしめている颯真の手に、力がこもる。
心菜「こ、このままじゃ料理できないよ」
背中に感じる颯真の体温に、心菜はドキドキと胸が高鳴る。
颯真「心菜は、俺にこういうことされるのは嫌?」
心菜「嫌なわけ……ない」
心菜は颯真の腕に、自分の手を添える。
颯真「そっか、良かった。もし嫌って言われたら、どうしようかと思った」
心菜の左肩に、颯真の顎がのせられる。
心菜「嫌だなんて、そんなことは絶対にないよ。だって、私はずっと颯真くんのことが……」