再会した幼なじみと、ひとつ屋根の下


ーーガチャッ。


心菜母「ただいまーっ」


玄関のドアが開き、心菜の母親の声が聞こえる。


心菜(やばっ。お母さん帰ってきた)


慌てて離れる、心菜と颯真。


心菜母「ただいま、ふたりとも」

心菜「おっ、おかえりお母さん」

颯真「おかえりなさい」


心菜母「あら、二人で仲良く料理?」


母親がニコニコ顔で、キッチンに入ってくる。


心菜「う、うん。颯真くんが手伝ってくれてて」

心菜母「そう。颯真くんありがとうね」

颯真「いえ。いつもお世話になっているので」


心菜の母に、爽やかな笑みを向ける颯真。


心菜母「あら? ここちゃん。何だか顔がいつもよりも赤くない?」

心菜「え!? そっ、そうかな? きょ、今日はちょっと暑いからかな?」


心菜は、顔を手でパタパタとあおぐ。


心菜(もしあのとき、お母さんが帰ってこなかったら……)


隣をチラッと見ると、何事もなかったように涼しい顔で野菜を切っている颯真。


心菜(もしかしたら私、あのまま颯真くんに『好き』って言ってしまっていたかもしれない)



それからしばらくして夕飯が完成し、心菜の母と三人で食卓を囲む。


テーブルには、デミグラスソースのハンバーグに、色とりどりのサラダ、炊きたてのご飯と味噌汁が並ぶ。


心菜母「家でハンバーグなんて久しぶりね。美味しいわ」

心菜「颯真くんのリクエストなんだよ」

心菜母「そういえば、颯真くんは小さい頃からハンバーグが好きだったわね」

颯真「はい。今日のハンバーグは、今まで食べてきた中で一番美味しいです」

心菜母「あらあら。良かったわね、ここちゃん」

心菜「う、うん」

颯真「今度また作ってよ、心菜」


微笑む颯真に、心菜は照れくさそうに頷いた。


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