七瀬先生、ここから先は違法です
第一話 想いを花束に込めて
〇自宅・玄関前(夕方)
白い外壁の一軒家のインターホンが鳴る。
――ピンポーン
夏鈴「はーい」
ガチャ。玄関ドアを開けると、立っていたのは夏鈴がよく知る人物。毎日顔を合わせる人だった。
七瀬「誕生日おめでとう」
夏鈴「……え、なっ、なんで?」
七瀬「卒業したら俺と結婚してください」
6月20日 17時16分
夏鈴が産まれた時間ぴったり。
18歳を迎えたての瞬間に夏鈴は人生で初めてプロポーズをされた。しかし、この状況が全く理解できない。
夏鈴(だって……理解できるはずもないよ)
理解できないのは予想もしていない人だったからだ。
夏鈴(なんで、どうして?……七瀬先生が??)
目の前にいるのは、副担任の七瀬先生。
頭の中は疑問符だらけのまま、夏鈴はゆっくりと七瀬先生を見上げた。
ピシッとしたスーツに身を包み正装した七瀬先生から、柔らかな笑顔と共に7本のバラの花束を渡される。
夏鈴「えっ?」
夏鈴(……なんで、七瀬先生から花束を渡されるの?)
夏鈴は戸惑うことしかできなかった。
突然渡された7本のバラの花束を手に持ち、七瀬先生の顔をジーッと見つめる。
夢にも思わない展開に驚いて放心状態だった。
夏鈴(花束?バラ?……なんで七瀬先生はスーツを着てるの?)
全く意味が分からなかった。完全に夏鈴の思考回路は停止した。
夏鈴(だって……だって! 七瀬先生は……私の副担任で、生徒にモテモテで、私とは正反対の人種の人だもん。そんな先生が私にプロポーズ?!)
夏鈴「……えっと、七瀬先生?」
七瀬「君が18歳になるのをずっと待ってたよ」
夏鈴「それは……どういう意味ですか?」
七瀬「成人おめでとう。結婚は卒業するまで待つけど、未来の旦那は俺にして?」
夏鈴が産まれた時間ちょうどに、目の前に現れた七瀬先生は、今までに見たことのない優しい笑みを浮かべている。
七瀬先生によって、平凡だった夏鈴の人生がガラリと変わった。
――振り回される日々が始まる。