七瀬先生、ここから先は違法です


七瀬「だから、卒業したら俺のものになって?」

夏鈴「……なりませんし、本当……なんの冗談ですか?ドッキリ?嫌がらせですか?」

夏鈴(……どうしよう。話が一向にかみ合わないよー)

七瀬「俺は水原のことが好き。法律に引っかからないように、水原が成人するまで待ってた。……それが真実」


 真剣に伝えられた言葉は、夏鈴が今まで言われたことのない言葉ばかりだった。七瀬先生の言葉は、まっすぐ夏鈴の心に刺さる。


夏鈴「……な、何回も言いますけど、七瀬先生捕まりますよ?それか、教師クビですよ?」

七瀬「良いこと教えてやろうか?」

夏鈴「え?」

七瀬「水原が誰にも言わなければ、クビにはならない」

 そう言って不敵に笑った。不覚にもその表情にどくんと心臓が波打つ。


夏鈴「……わ、私には七瀬先生を庇う理由はないです」

七瀬「じゃあ……あれだな。この問題を解決する方法がある」

夏鈴「なんですか?」

夏鈴(……この状況は刺激が強すぎて、ドキドキして心臓がもたない。解決する方法があるなら……知りたい!)


七瀬「……俺を好きになればいい」

夏鈴「は?」

 その言葉は目上の先生に向かって自然と出た。
 七瀬先生の瞳は真剣で冗談ではなく本気で言っているようだ。

夏鈴(最初からずっと話が通じてない……)



夏鈴「……七瀬先生のこと分からないし、好きになんてなれません」

七瀬「分からないなら、これからじっくり俺のこと好きになればいい」

夏鈴「先生と生徒が恋なんて……は、犯罪です!」

七瀬「俺と、恋の共犯者になろっか、」


 七瀬先生は甘い毒のような言葉を囁いた。

 夏鈴には、七瀬先生の視線も言葉も、刺激が強くて、重なる視線を必死に逸らした。

 視線を逸らした夏鈴の顔を覗き込み、言葉を零す。


七瀬「水原は俺のこと好きになるよ?」

夏鈴「な、なりませんよ。先生のこと好きになんて」

七瀬「そう?じゃぁ、好きにならないようにせいぜいがんばれ?」

 そう言って笑った七瀬先生は、悔しくなるくらいかっこよかった。


夏鈴「が、頑張らなくても、好きになんてなりません!七瀬先生に呼び出しされても、もう……きたりしませんから……」

七瀬「は?」

夏鈴「……だから、こうやって呼び出しとかもやめてくださいっ!」

七瀬「ふーん、俺副担任なのに? 先生として呼び出ししても?」

夏鈴「もう行きません! 勉強や進路のことで、なにかあれば担任の先生に相談もしますから!」

七瀬「……担任の先生ね、」


 意味ありげに呟いた意味は、この時は分からなかった。

七瀬「……分かった。副担任としては、距離感を保つよ……そろそろ、朝のホームルーム始まるぞ」


 悪戯っぽく笑う先生の表情に、顔が熱くなっていくのを感じた。それを見逃さなかった先生は、またニヤリと笑うのだった。




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