若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 こうして、カレンたちはホーネージュに……デュライト家に戻ってきた。
 ジョンズワートがカレンを連れて帰ってきたことを知り、屋敷は喜びで溢れた。
 サラなんて、勢いのままにカレンに抱き着いてきたぐらいである。
 
「奥様、おかえりなさい……! ずっと、お待ちしておりました」

 カレンを抱きしめながら、涙を浮かべてそんなことを言われたものだから。
 カレンは、サラを疑う必要なんてなかったことを改めて理解した。

「ありがとう、サラ。……ごめんなさい」
「そんな、奥様! 帰ってきていただけただけで、十分です」

 カレンの言う「ごめんなさい」には、彼女を疑ってしまったこと、姿を消してみなに苦労と心配をかけたことへの謝罪の意味が込められていたが……サラに伝わったのは、後者のみである。
 サラは、涙を拭いながら「よかった」と繰り返している。

 主人そっくりの息子までいるのを見て、使用人の女性たちは大いに盛り上がった。
 誰の子か、なんて聞く者はいない。だって、どう見てもジョンズワートの子なのだから。
 輝くクリーミーブロンドには天使の輪。瞳の色も父親と同じ深い青。
 女の子と見間違うほどに愛らしい幼子は、他の男の子供であると主張するほうが無理なほどに、父親寄りの見た目をしていた。



 もちろん、カレンの実家であるアーネスト家にもすぐに連絡。
 長い旅をしてきたカレンを気遣い、家族のほうがデュライト公爵邸まで会いに来てくれた。
 死んだとまで言われた娘が、生きていた。それも、可愛い可愛い男の子まで連れて。
 両親は、涙を流しながらカレンを抱きしめた。そしてやはり、孫のショーンにメロメロになるのであった。
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