若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「……まだ、気にしてる?」

 ジョンズワートの言葉に、カレンはどう返すべきかと少し悩んで。
 ゆっくりと、自分の思いを口にし始めた。

「それ、は……。当然、ではありませんか。私は、あなたにもショーンにも、本当にひどいことを……」
「……僕も、同じだよ。きみをたくさん傷つけたことを、きみをそこまで追いつめたことを、今も悔んでる」
「ワート様……」
「きみに嫌われていると思って、臆病になって。結婚したあとも、きみを守っているつもりになっていた。でも、きみのためだと思ってしなかったことや、言わなかったことが、きみを傷つけていた」
「それは、私が先にあなたを傷つけたからで……」

 ジョンズワートが、そっとカレンの髪に触れる。
 ラントシャフトから戻ったばかりの彼女の髪は、肩の少し下ほどの長さだ。
 それをひと房とって、ジョンズワートはそっと口づけた。

「……僕たちは、似た者同士なのかもしれないね」

 そう言う彼は、少し困ったように微笑んでいた。

「にたもの、どうし……」
「僕にもきみにも、非はあった。互いに臆病になっていた。傷つけあった。本当に必要なことを言わなかった。でも、今、こうして一緒にいられる。僕は、それを大事にしたい。あんなにすれ違ってもまた出会えた、一緒にいられるようになった。この時間と、この先を」

 ジョンズワートはそこで一度言葉を切り、カレンの肩に触れ、自分の方にそっと引き寄せた。
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