若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「ショーン!」

 自分に向かって手を振るジョンズワートの姿を見て、ショーンはぱあっと表情を輝かせた。
 ジョンズワートは、まだショーンの「父親」にはなれていない。
 けれど、年上の友人。よく遊んでくれる人。それぐらいには、思ってもらえているようだった。
 ジョンズワートがやってくると喜ぶのだから、とりあえず、嫌われてはいないのだろう。



 ショーンをデュライト邸に連れてきてからのジョンズワートは、休憩時間のほとんどをショーンと過ごすことに費やしていた。
 カレンもそれに合わせて休憩をもらい、三人でともに過ごしている。

「いこうか」
「うん!」

 ジョンズワートが、まだ幼い息子を抱き上げる。
 こうして子を抱いたり、手を繋いだりする姿も、ずいぶんさまになってきた。
 事情を知らない者が見れば、普通の親子だとしか思わないだろう。
 それだけ二人は本当によく似ているし、仲もいいのだ。

 ジョンズワートは早くに父を亡くし、若くして公爵となった人物であるが。
 幼い頃、ベッドで寝込むことが多かったカレンに色々な贈り物をした経験があるため、外で遊ぶのも上手かった。
 この公爵様は、花冠だって作れるし、草で引っ張り合いをして遊ぶことだってできる。
 他にも、葉っぱで船やお面を作ったり。四葉のクローバーを探したり。草笛を吹いてみたり。
 どれも、幼い頃のジョンズワートがカレンに見せたものである。
 まだ幼いショーンも、これらの遊びには大喜びで。
 すっかり懐いたショーンが、自分からジョンズワートを探しに行くこともあるぐらいだ。
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