若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 チェストリーとジョンズワートが並んだとき、ジョンズワートの方へ向かうこともある。
 これには、チェストリーも大変複雑な心境になり。

「血、血なのか? 俺と過ごした3年より、血から感じるものなのか?」

 と、ずーんと肩を落とした。
 ショーンがジョンズワートに懐くことを、彼らが親子になることを、望んでいた。
 しかし、自分ではなくジョンズワートを選ぶショーンを目の当たりにすれば、ショックを受けるのも仕方のないことだろう。
 この3年間、ショーンの「父」だったのはチェストリーなのである。
 なのに、ジョンズワートに負けることがあるのだ。
 嬉しいことのはずなのに、素直に喜ぶことができず。
 ヤケを起こしてジュースを飲みまくるチェストリーに――勤務時間であるため、酒は飲めないのだ――サラが付き合ってやることもあった。
 血なのか!? と強めにグラスを置くチェストリーに対して、サラが一言。

「……絵になるのは確かね」
「ちくしょー!」

 チェストリーは、更にジュースをあおった。
 これには、サラも哀れみの視線を向けることしかできない。
 父親の役割を、ジョンズワートへ渡さなければいけない。けれど、自分から離れていってしまうことが寂しい。
 その狭間にいる彼に、サラがしてやれることは――こうやって、愚痴に付き合うことぐらいだった。
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