若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「んん……」

 ベッドに一人残されて、まどろむ。カレンの声は、少し掠れていた。
 そこに、温かい飲み物を持ったジョンズワートが戻ってきた。

「はちみつ入りのホットミルクだよ」
「ありがとうございます、ワート様」

 ぽやぽやとしながらも、ジョンズワートからカップを受け取る。
 カレンの疲れや眠気を感じ取ったのか、カップを落とさないよう支えてくれた。

「おいしい……」

 たっぷりとはちみつの入ったホットミルクが、カレンの心と身体を温める。
 はちみつを入れてくれたのは、自分の喉を気遣ってのことなのではと気が付き、カレンは頬を染めた。
 先ほどまでのことを思い出してしまい、さらに顔が赤くなる。
 そんなカレンを、ジョンズワートは愛おしそうに見守っていた。
 カレンの声を掠れさせた、喉に気を遣うべき原因を作ったこの男、それはそれは上機嫌で。
 一旦カレンからカップを預かると、髪や頬にキスを落とし始める。

 カレンは思う。
 4年前の自分に、こんなにも愛される未来が待っていると、教えてやりたいぐらいだと。
 吹っ切れた彼は、その想いを信じる以外にないほど、愛情表現をしてくると。
 なでなで。すりすり。キスも何度も受けて、ひゃー、という気持ちになりながらも。
 カレンは、旦那様の愛を受け止め続けた。
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