若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンが最初からこの場に呼ばれなかったことには、理由がある。
 彼女は、ジョンズワートのことが大好きだ。
 ジョンズワートのことを庇い続けると、確信できるほどに。
 だから、カレンがこの場にいたら、ジョンズワートのせいではない、気にしないで欲しい、自分が悪いのだと言い続けることがわかっていた。
 カレンの気持ちが理解できないわけではないが、それでは話が進まない。
 だから一旦、カレンは別室に待機させ、話がまとまったらここに呼び、婚約のことを告げるつもりだったのだ。

 カレンはきっと、なにか誤解をしている。経緯を説明して説得すれば、彼女は首を縦に振る。
 だって、彼女は、ジョンズワートのことが大好きで、心から慕っていたはずだ。
 カレンの父はそう考えたのだが――

「……いえ。カレンには、本当に申し訳なかったとだけ、伝えてください」

 公爵家の跡取りとはいえ、ジョンズワートだって15歳の男子。
 あんなフラれ方をした後に、カレンに会うほどの力は、残っていなかった。
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