若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 結婚してから逃走までの間や、公爵邸に戻ってきてすぐの頃は暗い表情も多かった彼女だが。
 今では、こうしてよく笑っている。
 人間、思いつめたり追い詰められたりしているときは、本来の性質が隠れてしまうもので。
 カレンに笑顔が増えてきたのは、夏ぐらいだったろうか。少しずつ、彼女の中の霧が晴れてきているのだろう。
 本来の姿に、戻ってきている。幼い頃から彼女を知るジョンズワートも、それは感じていた。
 元来、彼女はよく笑う人だったのだ。
 妻が元気になってくれたこと、笑ってくれることが嬉しくて。ジョンズワートも、ついついショーンと一緒になってカレンに色々なものを見せてしまう。

 27歳になったというのに、幼い頃と、やっていることが変わらない。
 そんな風にも思いながらも、これでいいのだと、ジョンズワートは思っていた。
 息子も、妻も、こんなにも喜んでいる。



 別の日、ジョンズワートはまた、ショーンを遊びに誘った。
 しゃがんで息子に視線を合わせ、作戦会議の始まりだ。

「さあ、ショーン。今日は母さんになにを見せようか」
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