若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 元気いっぱいに遊ぶ姿が愛らしい、公爵家の長男・ショーン。
 旦那様そっくりの見た目に、なつっこい性格。
 周囲の人々に可愛い可愛いと言われることは、ラントシャフトでもホーネージュでも変わらず。
 ショーンはみなを笑顔にし、幸せを届ける、デュライト公爵家の宝物だった。

 そんなショーンだが、最近は。

「おとしゃ……。おとしゃ、まだ? どこ?」

 そう言いながら泣くことがある。
 ショーンは、これまで父親役をつとめていたチェストリーを探しているのだ。
 ジョンズワートも彼の父親になれるよう努力しているが……。
 ショーンが生まれてからの3年間、彼の父だったのはまぎれもなくチェストリーで。
 その「父」が長く不在にしているものだから、こうして寂しがる日もある。
 こうなってしまうと、息子に出会って1年にも満たないジョンズワートでは対応できず。ショーンを抱きあげておろおろするのみだった。
 夜になると不安になるのは、大人も子供も一緒なのだろうか。
 ショーンは夜間に寂しがることが多かった。

「ショーン。大丈夫。みんないるよ。僕も一緒にいるから」
「おとしゃ……おとしゃがいいの!」
「おとう、さん……」

 デュライト公爵邸に戻った今は乳母がいるが、家族の時間を取り戻すため、ショーンが寝るまでの時間を三人で過ごすことも多く。
 今は家族揃ってジョンズワートの寝室にいる。
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