若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
ジョンズワートはひどく落ち込んだ。
公爵家に戻ったあと、食事が喉を通らなかったほどだ。
ずっと前から好きだった子に婚約を拒否されたうえに、すっかり嫌われてしまった。
それも当たり前だろう。
カレンが馬に乗るのは初めてだと、知っていた。なのに自分の不注意のせいで、彼女に怪我をさせてしまった。
カレンの言う通りだ。こんな自分と一緒にいたら、カレンはこの先も怪我をし続けるだろう。
傷のことだってそうだ。責任をとって結婚すれば、傷がなくなるわけではない。
ジョンズワートにとってカレンは特別大事な人だから、そりゃあもう、彼女がとても愛らしく見えている。
だが、ジョンズワートの視界を通さなくても、カレンはとびきりの美少女だった。
腰まで届く亜麻色の髪は美しく、優しい緑の瞳は人を惹きつける。
次期公爵が近くにいるから目立った動きが少ないだけで、カレンとの結婚を望む者はいくらでもいる。
そんな彼女に、傷をつけたのだ。その相手が公爵家の自分ともなれば、カレンの婚姻の妨げとなるだろう。
謝って済む問題ではないのだ。
だからこその婚約だったのだが――ジョンズワートが愚かなせいで、こっぴどくフラれてしまった。
カレンは、ジョンズワートのことを「ワート様」と呼んでいた。
これは、ジョンズワートと親しい者にのみ許された呼び方だ。
デュライト公爵家の者は、ジョージ、ジョンソン、ジョセフィーヌ等、名前に同じ文字が入っていることが多い。
だから、親族との差別化をした愛称となると、「ワート」の方からとることになるのだ。
ジョンズワートが望んだから、カレンも親しみを込めて「ワート様」と呼んでくれていた。
しかし、婚約を拒否したときの彼女は――
「ジョンズワート様、か……」
自室で一人、ジョンズワートは、力なく呟いた。確かにあのとき、彼女はそう言っていた。
呼び方1つでも、彼女の心が離れてしまったことがわかる。
すぐには持ち直すことができなかったが、少し落ちついた頃、ジョンズワートはカレンへの接触を試みた。
けれど、もう。前のように会ってもらうことは、できなかった。
公爵家に戻ったあと、食事が喉を通らなかったほどだ。
ずっと前から好きだった子に婚約を拒否されたうえに、すっかり嫌われてしまった。
それも当たり前だろう。
カレンが馬に乗るのは初めてだと、知っていた。なのに自分の不注意のせいで、彼女に怪我をさせてしまった。
カレンの言う通りだ。こんな自分と一緒にいたら、カレンはこの先も怪我をし続けるだろう。
傷のことだってそうだ。責任をとって結婚すれば、傷がなくなるわけではない。
ジョンズワートにとってカレンは特別大事な人だから、そりゃあもう、彼女がとても愛らしく見えている。
だが、ジョンズワートの視界を通さなくても、カレンはとびきりの美少女だった。
腰まで届く亜麻色の髪は美しく、優しい緑の瞳は人を惹きつける。
次期公爵が近くにいるから目立った動きが少ないだけで、カレンとの結婚を望む者はいくらでもいる。
そんな彼女に、傷をつけたのだ。その相手が公爵家の自分ともなれば、カレンの婚姻の妨げとなるだろう。
謝って済む問題ではないのだ。
だからこその婚約だったのだが――ジョンズワートが愚かなせいで、こっぴどくフラれてしまった。
カレンは、ジョンズワートのことを「ワート様」と呼んでいた。
これは、ジョンズワートと親しい者にのみ許された呼び方だ。
デュライト公爵家の者は、ジョージ、ジョンソン、ジョセフィーヌ等、名前に同じ文字が入っていることが多い。
だから、親族との差別化をした愛称となると、「ワート」の方からとることになるのだ。
ジョンズワートが望んだから、カレンも親しみを込めて「ワート様」と呼んでくれていた。
しかし、婚約を拒否したときの彼女は――
「ジョンズワート様、か……」
自室で一人、ジョンズワートは、力なく呟いた。確かにあのとき、彼女はそう言っていた。
呼び方1つでも、彼女の心が離れてしまったことがわかる。
すぐには持ち直すことができなかったが、少し落ちついた頃、ジョンズワートはカレンへの接触を試みた。
けれど、もう。前のように会ってもらうことは、できなかった。