若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンとの待ち合わせ場所まではそれなりに距離があったが、ジョンズワートはショーンを抱いたまま離さなかった。
 腕が疲れを訴えて痛むが、それよりも、今は息子がここにいること、この重みを感じられることの方が、重要だった。
 カレンと合流すると、彼女もまた、よかった、ごめんね、と繰り返す。
 ショーンがカレンの方へ行きたがっていることを感じ取り、ジョンズワートは息子を妻へ預ける。
 泣きながら母にすがりつく息子と、涙をにじませながら息子を抱きしめる妻。
 そんな妻子を、ジョンズワートは二人まとめて抱きしめて。

「ごめんね、ショーン。カレン。もう絶対に、離ればなれになんてしないから。きみたちのことを、離したりしないから」

 その言葉には、どれほどの想いがこもっているのだろう。
 何度も失いかけた男の、何年分もの想いが、そこに詰まっていた。
 カレンにも、もちろんその重さは伝わっていて。

「はい。はい……! 私も、もう、離れません」

 夫に抱きしめられながら、ぽろぽろと涙をこぼした。
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