若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 カレンとジョンズワートの方針で、夕食はなるべく家族揃ってとることにしている。
 まだ幼い第三子も含めた五人で食卓を囲めば、穏やかな時間が流れ始める。
 公爵家であるから食事はマナーの練習も兼ねており、そこまで賑やかなわけではないのだが。
 それでも、五人もいれば笑ったり拗ねたり、それなりに盛り上がったりもするもので。
 妻であり母であるカレンからは笑みが絶えない。
 ジョンズワートもまた、そんな妻子を見て愛おし気に瞳を細めている。


 誘拐され、死亡説まで流れても諦めず妻を探し続け、取り返した男、ジョンズワート・デュライトと、それだけ愛され求められた妻、カレン・アーネスト・デュライト。
 この二人の話は、再会した彼らが仲の良い夫婦として暮らしていることまで含めて、ホーネージュでは有名だ。
 二人をモデルにした恋物語まで存在するぐらいである。
 そのお話を読んだときは、本当はこんなにきれいじゃなかったよね、実際には拗れまくっていたよね、と二人で苦笑したものだった。
 

 額に傷をつけたことがきっかけで拗れに拗れ、すれ違いに勘違いを重ねた二人。
 色々なことが……本当に色々なことがあったが、今では物語の中の自分たちに負けないほどに、よき関係を築けている。
 ジョンズワート・デュライトと、カレン・アーネスト・デュライトは、これからも、夫婦として、親として、公爵家の人間として。大事なものを、守り続けていく。
 死が二人をわかつまで――いや、もしも命を失ったとしても。もう二度と、二人が離れることはない。
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