若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「これは……」
「ジョンズワート様からの贈り物です」

 ベッドのサイドテーブルに、いくつかの貝殻がおいてあったのだ。
 手に取ってみると、それらは紐で繋がっていて、吊り下げて飾れるようになっているのがわかった。

「ワート様……」

 あまり外に出られないカレンのため、彼はこうして、外のものをカレンに贈ってくれるのだ。
 ジョンズワート本人は、もうここにはいない。
 でも、確かに彼がここにいたこと、彼の優しさや気遣いを感じて、カレンの胸があたたかくなる。
 彼からの贈り物をそっと両手で包み込むと、先ほどまで沈んでいたことが嘘のように、自然と笑みがこぼれた。
 
「ワート様、また来てくれるかしら」
「ええ。あの方でしたら、もちろん、またお嬢様に会いにきてくださいますわ」

 来てくれるかしら、なんて言ったけれど。カレンは、彼がまた来ると信じていた。
 それはカレンに問われたメイドも同じで。ジョンズワートは、何度だってカレンに会いに来る。そう確信していた。
 そしてその通りに、ジョンズワートはその後もアーネスト邸に通い続けるのだった。



 また別の日には、二人でアーネスト家の庭に出たが、途中、カレンが調子を崩して動けなくなってしまった。
 アーネスト家の使用人が動くより早く、ジョンズワートがカレンをおぶり、屋敷へ向かう。
 周囲の大人たちは、ジョンズワートがカレンに向ける好意を知っていたから、好きな女の子をおぶって運ぶ彼を、黙って見守った。
 カレンと別れる際には、「無理をさせてごめんね」「また来るよ」と優しく彼女の手に触れていた。
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